メトロン星人東京をゆく【4】

前回までのあらすじ
 なんだかよくわからないが、『水準』というヤツにもいろいろあるらしい。
 ときどき騙すヤツもいるから、よい子のみんなは気をつけろ!


渋谷といえば『若者の街』というのがいちばん手っ取り早い気がする。
昔も今も、たぶん認識は同じという人がきっと多いんじゃないだろうか。ハチ公前はもはや言うまでもなく全国区の待ち合わせ場所であるし、駅前のスクランブル交差点はいつもいつも「どこからこんなに人が湧いてきたんだ!?」と思うぐらいに人がごった返している。センター街にはギャルだの鼻ピアス男だのが所狭しとひしめき合い、週末の夜ともなると自分の限界を知らずにはしゃぎすぎた学生なんかがぱたぱたと道端に倒れている。東京にはそれこそ新宿だの池袋だの品川だのと大きい街が多いが、そんな中でも渋谷ほど「雑多」だとか「無秩序」だとかいう言葉が似合う街もないんではないかと思う。

で、我々は、

Metron21

こんなくじを引いてしまったので、その渋谷に向かうことになったのである。
ここで、渋谷のどこに行こうかと全員が頭を悩ませていたとき、吉田氏が「そうだ!」と叫んだところに話を戻そう。
彼が浮かべた候補地とは、いったいどこだったのか。話を聞いてみることにした。

吉田「マミドバーガーに行こう!」

いきなり出てきたのが、どうやら食べ物屋の名前らしい。それにしても、『バーガー』という名前がつく割には、なんだか全く聞いたことのない名前だ。
もうその名前から、明らかにこの人はヘンなものを我々に食わせようとしているんだというその意図が汲んで取れた。でも、いくらなんでも、それがどんな店なのか、せめてどんな毛色の店なのかぐらいはある程度教えてもらわないと困る。

高倉「ラーメン二郎系じゃないよね?」
吉田「違う違う」

やたらとハンバーガーがでかいとか、大食いとか、そういう系統ではないらしい。

たい「ゲテモノ系じゃないですよね?」
吉田「…」

なぜ、そこで黙るのか。
僕の頭の中では、『ゲテモノ』と『バーガー』、またその『マミド』という3文字の語感が入り交じり、なんとなく『ミミズバーガー』のようなものを食わされるのではないか、いやいやそれはまだマシな方で、実は虫かなんかが挟まってるんじゃないだろうか…というように、どんどんと悪い方向へと想像が一人歩きし始めた。

しかし、高倉仮面氏の次のこの質問が、我々の方向性を決定づけることとなった。

高倉「それは東京でしか食べられないものかい?」
吉田「イエース!」

そう、そういうことなのだ。
大阪兄弟の2人が楽しみにしている「東京でしか食べられないもの」を食べに行くとなっては、もうこれは行くしかないだろう。いくら、仮にそれがゲテモノだったとしても、だ。
腹をくくった我々は、まずは『マミドバーガー』に行き、観光スポットはその場で何かいい場所を思いついたらそこへ行く、という渋谷エンジョイ計画を練り上げたのだった。


さて、渋谷に向かうルートである。我々は『Z』と書かれたくじを引いたため、半蔵門線に乗っていかなければならないのだが、幸い、国会議事堂の目の前から歩いてちょっとのところに半蔵門線の『永田町』駅があった。そこから半蔵門線に乗ってしまえば、乗り換えなしでものの6分あれば着いてしまうというわけだ。
というわけで、我々は国会議事堂を離れ、徒歩で永田町駅へ向かうことにした。

Metromap03


国立国会図書館の脇を通り、そのまままっすぐ300mぐらい行けばもう永田町駅というところで、ふと横にある道路標識を見ると、そこには『最高裁判所』の文字が並んでいる。その標識から少し上に目をやると、横たわる都心環状線の高架の向こうに異様な威圧感を放つ白い建物が見えた。
思わず、道を渡ってその袂まで近づく。

Metron22

高倉「おぉー、これはすげえなぁ」

その佇まいは圧巻としか言いようがなかった。さすがは司法府の最高権威といったところか。あとで調べたところによると、岡田新一氏という建築家によって設計され、日本建築学会賞まで受賞している建物だそうだ。僕は一度、小学校の社会科見学でここの小法廷を訪れたことがあるのだが、そのときはただ「でけぇー!!」と言って同級生とはしゃぎ回っていただけのような気がする。人間、歳を取ると物の見方も変わるものなんだな、なんてぼんやりと考えながら、その白い塊を見上げていた。

最高裁をちょっと回り込むと、その裏手には国立劇場があるようだった。地図を見るとぴったりと隣接しているらしい。そのままぐるりと一周する。この辺りは、東京組にとっても意外な再発見のある、なんとなく不思議な空気を持った場所だった。

Metron23


思わぬ寄り道をしてしまったためちょっと迷いかけたが、なんとか永田町駅に到着。
路線図を眺めながら電車を待っているとき、駅ナンバリングの路線のアルファベットの話になった。つまるところ、なぜ半蔵門線のイニシャルは『Z』で、なぜ都営三田線のイニシャルが『I』なのか、という話だ。
考えてみると、半蔵門線は『半蔵門』をローマ字で書くと『HANZOUMON』だが、『H』は日比谷線ですでに使われているため、次の特長のある『Z』を採用。都営三田線の方は、『三田』をローマ字で書くと『MITA』だが、『M』は丸ノ内線、『T』は東西線ですでに使われているから間を取って『I』を採用、というのがいちばんまっとうな説に思える。
しかし、仮に半蔵門線の方の理由は納得がいったとしても、都営三田線の方がなんだか納得がいかないのはきっと気のせいではないはずだ。
そんな些細なことだが、しっかりいちゃもんをつける吉田氏。

吉田「まだ『HAN"Z"OUMON』の方がマシだよな」

それに便乗して騒ぎ出す次男くん、そしてそれにさらに乗る吉田氏。

次男「ハン──モン!」
吉田「ハン───モン!」
次男「ハン────モン!」
吉田「ハン─────モン!」

この2人、さっきのとんがったとこといい、ほっておくとやたら元気だ。
なお、この2人のはしゃっぎっぷりが高じて、昨年の東京23区くじ引きツアーでは『噴水事件』というアクシデントが起こった。お暇であれば併せてご一読頂きたい。


Metron24

夕方の4時40分。
渋谷駅前のスクランブル交差点は、相も変わらず非現実的な数の若者達で溢れかえっていた。

さあ、いざ渋谷には着いたものの、目的地を知っているのは吉田氏のみである。我々は、彼の言うなりに、人混みを縫うように駅前の交差点を渡る。
けっこう歩くのかと思いながら小走りに歩いていると、吉田氏が突如何かを指差した。

吉田「あった、ここだ」

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目的地の『マミドバーガー』は、駅前のスクランブル交差点に面した、渋谷マークシティの近くの小さいビルの1階にあった。こんなに駅の近くにあるのに誰も知らなかったというのがなんだか意外で、かつ少し不気味でもあった。
でも、ここで「やっぱやーめた」なんて言って引き返すようなことはできないのだ。とりあえずどんなものかを確認してみなければいけない。我々は、意を決して店の前まで近づくことにした。

店頭に立つと、バイトの女の子が「いらっしゃいませー」と微笑んでくれた。
どうやら、このあたりまではふつうのファーストフードとあまり変わらないようだ。
ここまでは、よかった。

しかし。
店のメニューを見たとき、ようやく事態が飲み込めた。
そこには、しっかりとした文字で『スイーツバーガー』と書かれていたのである。しかも、

「チョコはアレでケチャップはコレ! マミドバーガー \390」
「当店一番人気です!! フライフィッシュバーガー \440」

などという、かの有名な名古屋『マウンテン』の抹茶小倉スパゲティとか、愛媛県は道後『清まる』のとんかつパフェを連想させるような世にも恐ろしいフレーズが売り文句になっているのだ。それは本当かと思い、食品見本に目をやると、『フライフィッシュバーガー』なんてのは白身魚のフリッターの上にこんもりと生クリームが乗ったような作りになっている。

みんなで本当にコレを食べるのかどうするのかとわいのわいのやっていると、高倉仮面氏がいきなり野太い声でこう言い放った。

高倉「ビッグマミドひとつ!!!」

…やはり、食うのか……。

一人が注文してしまったら、もう連帯責任である。
仕方なく、長男くん、次男くんと僕は『クリームコロッケバーガー』を注文。
吉田氏は『マミドバーガー』だけかと思ったら、『マミドポテト』なんてヤツを「もちろん、揚げたてで」なんて言いながら追加注文していた。

会計を済ませて程なくすると、全員分が出来上がった。
店がただのスタンドのようになっていて、椅子に座って食べることができなかったため、マミドバーガーのすぐ脇の道路でテイスティング・タイムとすることにした。あまり行儀はよろしくないが、まぁ仕方ないものとしよう。
袋から取り出して紙の包装を開けると、ハンバーガーの形をした、しかし生クリームまみれの物体がコンニチハしていた。高倉仮面氏の頼んだ『ビッグマミド』なんかは、具がもはや生クリームとフルーツにしか見えない。

でも、買った以上、あとは食べるのみである。
我々は、「せーの」で、そのハンバーガー状の物体にばくっとかぶりついた。

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全員「…甘っ!!!!!」


…甘い。
とにかく、甘かった。
ハンバーガーというよりは、明らかにケーキなのだ。

そう、食べるまで気づかなかったのがお恥ずかしい限りという話なのだが、この『マミドバーガー』という店、早い話がハンバーガーの形に似せた生クリームケーキの店だったのだ。
僕が食べた『クリームコロッケバーガー』に関して述べると、バンズの部分はスフレタイプのケーキ生地。そこに、生クリームの周りにパウンドケーキの粉末をまぶしてコロッケの形にした、いわゆる『クリームコロッケ』と呼ばれるものと、あとはフルーツをいくつか挟み込んだもの、というのがその実態だったというわけだ。

それにしても、ゲテモノでなかったのはよかったものの、先ほど霞ヶ関でずんだ団子を食べたばかりである。取り立ててスイーツ好きな面子が一人もいない我々にとって、2連続で甘い食べ物というのはかなり堪えるものがあった。

そんなグロッキーな我々に、さらに追い打ちをかけるものが残っていた。
吉田氏が「揚げたてで」などと言いつつ意気揚々と注文していた『マミドポテト』である。

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これを口の中に入れた瞬間、どれだけコイツが芋けんぴであってほしかったと思ったことか。
確かにフライドポテトの形はしているが、実はカスタードクリームを無理矢理フライドポテト状にして無理矢理揚げました、というのがその正体。かなりがんばってその形にした努力は認めるが、実際は生暖かいカスタードクリームの天ぷらを食べているようなものだ。
一口程度ならまだいいけれど、二口三口と食べるうちに胸焼けしそうになってしまった。

高倉「…やられたな」
吉田「…いやー、オレもこれはやられた」

甘くてくどいもののダブルパンチを食らい、顔を見合わせる一同。
そして、マミドポテトを注文していた吉田氏ですら本気で耐えられなくなったのか、

吉田「よし! もうこのマミドいいね!」

などと言いつつ、マミドポテトを袋詰めにして隣にあったゴミ箱へ放り込む始末。
こうして我々は、マミドに完敗を喫したのである。


こうなってしまっては、もはや渋谷で観光をする気力などないのが当然である。マミドバーガーに行く途中にハチ公とスクランブル交差点は見たので、大阪兄弟にはあとモヤイ像ぐらい見せときゃ十分観光になるだろう、ということになった。

高倉「もう渋谷はいいね?」
次男「駅周辺で済ます気か!」
高倉「また渋谷引きゃいいんだよ! オレたちゃマミドにやられてんだよ!」

渋谷には、半蔵門線の他にもう1本、銀座線という地下鉄が通っている。もう一度渋谷に来たけりゃ、銀座線の渋谷を引け!というわけだ。むろん、もし万が一渋谷を引いたとしても、マミドバーガー再挑戦だけは避けたいところであるが。


辛いものが食べたい…
しょっぱいものも食べたい…
それよりも、まずはとにかく水が飲みたい…

こんな言葉を呪文のようにぶつぶつ繰り返しているうちに、あっという間にモヤイ像前に到着。もはや、観光の証拠写真を撮るのもやっつけ仕事だった。

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そして、速攻で『儀式』である。


全員「これでー、半蔵門線はー、制ー覇ー!!


儀式の後は、流れるようにくじ引きに突入。
次の目的地では、もっと観光スポットもたくさんあって、おいしそうな店に巡り会えますように。そう祈りつつ、次男くんに路線、吉田氏に番号のくじを引いてもらった結果…


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『m-05』と出た。
丸ノ内線分線の『中野新橋』駅に行くことになったそうだ。

「…ふーん」
「…で、何があるの? ここ…」

と言わんばかりの微妙な空気が一同の間に漂う。これは、明らかにピンチの部類である。
慌てて駅周辺の地図をめくり、何かめぼしいものはないかと探してみると、ほんのり太字でちょっとだけ目立つように書いてあったのが、この2つ。
『貴乃花部屋』と『ホルスタイン会館』である。

…どうにも、微妙だ。

つづく。

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メトロン星人東京をゆく【3】

前回までのあらすじ
 『とんがったとこ』は、予想通り、たいしてとんがっていなかった。


一之江駅までの戻り道。
『とんがったとこ』まではちょっと駅から遠かったのだが、同じ距離を歩いているはずなのに帰りとなると余計に遠く感じてしまうのは気のせいだろうか。
眩しい5月の日射しが照りつける中をだらだらと歩いていると、長男くんがこんなことを言う。

長男「いやー、この靴履いてきて正解でしたわー」

どうやら長男くん、今回のツアーのためにわざわざ新しい靴を買ってきたらしいのだ。
彼は、今回の企画が「東京駅に着くなりいきなり誰かの家に行って、2日間ずっと寝ずに雀卓を囲む」なんていうインドアなものである可能性も考えなくはなかったそうだが、やはりこのメンツでそれはないだろうと思っていたのだろう。
そして、その考えは正しい。
実際、本当にさんざんあちこちに連れ回すつもりなのだから。


さて、次の目的地を目指し、午後2時半過ぎに一之江駅を出発した我々。
30分経って、ようやく1回目の乗り換えポイント、住吉駅に到着する。

次男「もう3時だ! 早ぇ!」
吉田「とんがってただけだぞ?」

そう、この東京メトロの旅、気づけばまだ1路線しか"制覇"していないのだ。それでも時刻はもう3時。初日に、もし日付が変わるギリギリまでがんばるにしても、あと9時間しかないのである。
移動と観光、それと食事。これを全部片づけるとなると、1路線あたり2時間ぐらいかかってしまうわけだが、そんなペースではまずい。せめて1日目は6つぐらい片付けておかないと、翌日までに全制覇できなくなってしまうということに気がついた。

かといって時間に急き立てられることもなく、乗り換えの電車を待つ5人。恐ろしいほどマイペースである。

ということで、次に我々が向かう先は、

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『M-15』。丸の内線の霞ヶ関駅である。
一之江駅からは、ここ住吉まで都営新宿線に乗った後、そこから半蔵門線に乗り換えて大手町へ、そしてさらに丸ノ内線へと乗り継がないと着けないのだ。そんなにたいした距離ではないはずなのだが、乗り換えがまためんどくさい。そして、それが我々の時間と体力をじわじわと奪っていくのである。

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ときどき、大阪や名古屋の地下鉄がまっすぐ走っていてわかりやすいなぁ、とうらやましく思うことがあるのだが、東京の地下鉄というのは、ちょっとうねうねしていて一見わかりづらい造りをしている。実際、路線図を見ると、何本もの地下鉄が皇居の周辺部をぐるっと取り囲むように走っているのがよくわかる。それも「皇居の下は通ってはいけない」というルールがあるせいらしい、というのは有名な話である。
その話にも諸説あって、

「そもそも、皇室の私有地を通すのはまずい」
「東京の地下鉄はかつての市電の路線を元に経路を決めた。当然、皇居を通り抜ける市電などなく、そのため皇居の地下を通る地下鉄もない」
「皇居の地下に穴を空けると真下から爆弾か何かで狙われるので、テロ対策のために穴を掘らせない」

というまともな説もあれば、

「皇居の下には実は巨大な地下核シェルターを兼ねた秘密基地があり、地下鉄が通過できる場所がない」
「中国から盗まれた北京原人の骨が隠されているから地下は掘れない」
「旧陸軍の膨大な弾薬が埋蔵されている」
「風水的に地下鉄は『陰』の気脈だから、皇居の地下を通すと天皇家に不調をもたらすのでダメ」
「実は六本木や市ヶ谷につながる地下通路がある」
「いやそれは奥多摩まで続いている」

なんていう都市伝説のような説もあるらしい。つくづく、人間というのは自分の手が届かないところに対する想像力に長けた生き物だなぁ、と思ってしまう。


結局、霞ヶ関に着いたのは3時15分であった。
さすが日本の中央集権の象徴となる駅だ。黄色い案内板には官庁の名前がびっしり書かれている。

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だが、この日は5月3日、憲法記念日。紛うことなく国民の祝日である。
当然、ゴールデンウイーク真っ只中に霞ヶ関近辺で仕事している人がいるわけがない。普段は国家公務員さん達でごった返しているであろうはずの駅はひどく閑散としていて、通る人もまばら。店もどれもこれも閉まっていて、なんだかものすごく寂しい雰囲気であった。


ところで、ここ霞ヶ関の観光スポットであるが、まぁ近いしとりあえず国会議事堂は見ておこうよ、ということになった。自分にとっては、小学校の社会科見学以来だ。
ただ、国会議事堂と官庁街だけでは、本当に社会科見学となんら変わらなくなってしまう。そこで、他に何かないかと思ってじっと地図を見ていると、『日本水準原点』というものを発見した。
人は、「原点」とか「中心」とか「元祖」とか、英訳したときに必ず「The」がつくような感じの、そういった言葉にはものすごく弱い。言い換えれば、無条件でそそられてしまうということだ。
そして、この5人も、例外ではなかった。

階段を上がって地上に出て、「人がいないねぇ」「静かだねぇ」などと言いながら、のんびり外務省と国土交通省の間、霞ヶ関坂を歩く。
しかし、みんなまったりしていたのだが、なぜか長男くん一人だけがやたらとテンションが高い。

長男「ボク、もうおのぼりさん状態ですわ!」

確かに、大阪にはここまで密集して巨大な官庁街というのがないせいなのか。その雰囲気のどの辺が彼を触発するのかよくわからないが、回りのビルやらなにやらがどんどん彼のスイッチを入れていくようである。

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霞ヶ関坂を登り終わり、国土交通省の前を通過すると…

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長男「すげーすげー! 国土交通省の看板! あれ見たことありますわ!」
吉田「あの役人とかいろんな人が出てくるヤツ?」
長男「そーですそーです! どんどんテンション上がってきますね!」

皇居が見える大きな交差点に差しかかると…

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長男「皇居の周りをジョギングする理由がよくわかりましたわ!」
   これは広くて気持ちいいですもん!」

いつも思うのだが、彼のリアクションはその場にうれしいと思ったであろう感情をストレートに表していて、本当に素晴らしい。ここまで素直に喜んでくれると、いくらくじを引いてたまたま来たところとはいえ、連れてきた甲斐があったというもんだ。


目的の『日本水準原点』を探して国会議事堂の近くにある公園のような敷地(どうも、「国会前庭洋式庭園」という名前だったらしい)に入ると、入口からすぐのところに、膝の高さ程度にも満たない石碑のようなものを見つけた。
『水準点』と、書いてある。

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全員「えぇー、コレが…!?」


…どうにも、しょぼい。
誰か悪意を持った人が夜中に小一時間でもかけてつるはしとスコップで掘り返したら簡単に持っていってしまえそうなサイズだ。
でも、『水準点』と書いてあるのだ。
地図には大きな字でしっかりと書かれていたものの実態がまさかこんなものであろうとは、なんだかがっかりである。

これが現実というものなのかと思い、仕方なくその『水準点』の写真を撮っていると、いつの間にそんな奥の方まで行っていたのだろうか。遠くの方から次男くんが全力で走ってきた。
こう、叫びながら。

次男「気をつけろー! その水準はニセモノだー!」
全員「なにぃ───!!!」

どうも、そのニセ水準からちょっと上のこんもりと丘状になったところに、本物の『日本水準原点』があるらしいのだ。
我々は、さっきまで騒いでいたニセ水準はそっちのけで、大急ぎで丘を駆け上がった。

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本物はやっぱりというか、明治24年5月から設置されているというだけあって、さすがに立派である。実際にこの建物が明治24年からあるかどうかはまた別の話だろうが。でも、日本の標高を決める基準点たるもの、やはりこうでなくてはならない。
…それにしても、次男くんが気がつかなかったら、ニセ水準を本物と信じ込んだまま終わっていたんだろうかと考えると、ちょっと恐ろしい気がする。

危うくトラップに引っかかりそうになったが、無事『日本水準原点』を見たということで、とりあえず観光は目的達成、ということになった。

ここで問題なのは、もうひとつのルール「必ず食事をする」というヤツだ。
振り返ってみると、この場所に辿り着くまでにレストランや喫茶店はおろか、コンビニのコの字すら見当たらなかった。つまり、絶望的に食べるものを売っているところがないのだ。
そういう場合は、やむを得ない。早くも2駅目にして"非常手段"の出番である。
買い置きしていた「ずんだ団子」を食べるほかない、というわけだ。

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ちょっと生あたたかくなった団子を頬張る5人。
またもや自販機すら近くになかったので、やたらと喉が渇く。
勢いでルールをひとつ追加してはみたものの、いざ始めてみてこういうアクシデントがあると、毎回毎回なんかしらんを食べながら全路線を制覇していくっていうのは、やっぱりいくらなんでも無理があるんじゃないだろうか。そう考えながら、すぐ側にそびえ立つ、三権分立を象徴しているという時計塔をぼんやり眺めていた。

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さて、吉田氏も「よう、今日ちょっとギジってかねーか?」と言うことだし、ちょっとだけ国会議事堂へ。メトロンさんにも、ちょいと国会議事堂を狙ってもらうことにした。

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でも、メインはやはり『日本水準原点』だったということで、何枚か写真を撮るだけで国会議事堂観光はあっさりとおしまい。
ということで、残るは『儀式』である。


全員「これでー、丸ノ内線はー、制ー覇ー!!


気がつけば、時刻はもう4時。いい加減とっととくじを引いて、早いとこ次に行ってしまわないとさすがに本当にまずい時間なのだ。
あまり記憶が定かではないが、このときは確か、次男くんが路線を、長男くんが番号を引いたんじゃなかったかと思う。
その結果は…

Metron21

『Z-01』。
半蔵門線の『渋谷』駅、と出た。

次男「渋谷ぁ!?」
高倉「渋谷かー…」
たい「渋谷ねぇ… どこ行きゃいいんだ!?」

地下鉄の駅はたくさんあれど、まさか、ど真ん中直球で5人全員がよく知っているウルトラメジャーな駅を引いてくるとはそうそう予想はしていなかったので、一同思わず面食らってしまった。
あわてて必死で渋谷の観光スポットを考えたものの、ハチ公前に行くのも、『電力館』に行くのも、『たばこと塩の博物館』に行くのも、どれもいまひとつ冴えない。

これは困った…と思っていたその矢先。
何か、ひらめいたのだろうか。吉田氏が突然、「そうだ!」と叫んだ。


つづく。

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メトロン星人東京をゆく【2】

前回までのあらすじ
 今年は東京の地下鉄をくじ引きで回ることになってしまった一行。今年最初の目的地は、都営新宿線の『一之江』駅。果たして、そこで何が5人を待ち受けるのか。


都営新宿線というのは、新宿を基点にして、東京の中心部をずっと東に抜けてそのまま江戸川を越え、千葉県の本八幡に至る路線である。下町というよりは、どちらかというと東京湾の埋立地に近いエリアを走る電車のため、千葉に近づけば近づくほど普通の住宅街となっていく。

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次男くんは今回くじを引くにあたって「今回はいい引きするよー、ゴール右隅あたりにシュートばんばん決めるよー」なんて言っていたが、このこの初っ端のくじ『一之江』というところはゴールではなくて東京の右隅である。そして、「隅」なだけにやっぱり住宅街であって、全然観光スポットも何もありゃしないのだ。

だが、本当に何もないのかなんて、実際に足を運んで、自分のこの目で確かめてみないとわからないのも事実だ。そう考えを改め、気を取り直すことにした5人。東京駅からしばらく歩いて『日本橋』駅から都営浅草線に乗り、『東日本橋』駅から都営新宿線の『馬喰横山』駅へ向かい、そこから『一之江』を目指す、というルートを辿ることにした。

Metromap01


さて、ここで時間をちょっと前に戻して、前回軽くしか触れなかった「デパ地下で団子を買った」という話にフォーカスを置くことにする。

実は、この企画の1ヶ月ほど前、吉田氏が次男くんに対して「東京でどんなことして遊びたい?」という質問をメールで投げかけていたのであるが、それに対する次男くんの返事は以下のような内容だった。

- - - - - - - - 8< キ リ ト リ セ ン - - - - - - - -
 せっかく集まるんで、みんなで競いあうような遊びもしたいねぇ
 東京VS大阪でいろんな遊びやるもヨシ

 観光としては、東京らしいものを食べてみたいなぁ
 これまであまり名物には縁がなかったんで(汗
- - - - - - - - 8< キ リ ト リ セ ン - - - - - - - -

我々東京組は、考えた。
去年はひたすらくじで引いた行き先に翻弄され、大阪兄弟は東京みやげを買う時間すら満足に与えてもらえなかったという事実がある。だから、せっかく新幹線代を出してわざわざ東京くんだりまで出てきている彼らのために、次男くんの希望通り、今回は東京名物をみんなで食べる時間を設けようというわけだ。たぶんきっと、どこか途中で東京名物の食べられる駅に下車できるだろうから、そこで1回や2回うまいものを食べさせてあげることができるだろう。最悪、そういう駅を引かなくても、どこか近いところに途中下車してもいいと言う腹づもりでいた。

でも、みんなが集合した直後のこと。
「まずはデパ地下に行くぞ」と言い出したのは高倉仮面氏だったわけだが、なんだか妙にそれが強引なのだ。いいから、とにかくデパ地下に行って東京名物買いやがれこの野郎!というぐらいの無理矢理っぷりだ。
おかしい。いくらなんでも不自然である。事前に企画を練っていた段階で「最初にデパ地下に行く」なんていう予定は立てなかったはずなのに。
高倉仮面氏以外の全員が狐につままれたような顔をしている中、彼はどんどん先陣を切ってデパ地下へと向かっていく。
どうやらこの男、何か企んでいるらしい。この時点でわかったことは、それだけだった。

デパ地下に着くと、さすがに東京駅なだけあって、東京ばな奈や焼栗屋の東京メロンパンとらやの羊羹花園万頭など、いろいろな東京名物が所狭しと陳列されている。しかし、どれもこれも、さすがに東京に住んでいても食べたことがあるものばかりで、どうも食指が動かない。
と、そんな中、我々の目にすっと飛び込んできたのが「ふるやの古賀音(こがね)だんご」である。
実際、それはうまそうだった。幸いにして誰も食べたことがなさそうだったので、その場でふるやの団子を買うことに決定。何種類かある中で、やはりこの言葉には弱いのか「期間限定」という札書きのあるずんだ団子を選び、購入したのである。

Metron05


またここで時間を戻そう。東京駅からまっすぐ延びる大通りを歩き、日本橋駅に向かっていたときのことだ。誰が言い出したのか忘れたが、「なんで団子を買ったんだ?」という話になった。
そこで、高倉仮面氏が、熱弁をふるう。前回は大阪兄弟に満足に東京名物を食べさせてあげられなかったのは、さすがにちょっと申し訳ないことをしたと。だから、みんなで東京名物を食べるためにデパ地下に行ったのだと。
それには、大阪兄弟2人も、吉田氏も、僕も納得した。もっともな道理だったからだ。

しかし、我々は、その後の彼の言葉に耳を疑った。

高倉「全部の駅で食おう」

耳を疑うのと同時に、なぜあんなに強引にいきなりデパ地下に行ったのか、なぜわざわざ団子を買ったのか、すべてが氷解した瞬間だった。

…そうか、この男が企んでいたのはコレだったのか。
つまり、企画の段階でボツになった東京名物食い倒れの話を、彼は諦めていなかったのである。今回乗る予定の東京の地下鉄は全部で13路線あるので、1路線乗るごとに食べると2日で13食になってしまうわけだ。

次男「何も13食にしろとは言ってねーぞ!!」

即座にツッコむ次男くん。当然の反応だ。
それとは対照的に、それこそ何が起こっているのかわからないような顔をする長男くん。そして、こんなことを言う。

長男「次男さん『吉田さんと最近メールしてるんですか?』って言ったら『ううん?』って言うてたやないですか!」

どうやら長男くんは、次男くんと吉田氏との間でメールのやりとりが行われていることを全く知らなかったようである。本当の意味での被害者は、もしかしたら彼なのかもしれないと思ったが、高倉仮面氏は長男くんに情けをかけるそぶりを微塵も見せず、さらっと丸め込もうとする。

高倉「しょーがないでしょ、企画OKしちゃったんだから」
次男「誰がよ」
高倉「メトロン星人が」
次男「あー、そりゃしょうがねーや」

長男くんでなく、次男くんがあっさり丸め込まれてしまった。
そんなわけで、「メトロン星人のせいで」ということになってしまったが、高倉仮面氏の思惑通り、ここでルールを追加することになった。

① 地下鉄の路線を表すアルファベットをひとつのくじに、それぞれの路線の各駅に振ってある駅番号をもうひとつのくじにする
② くじを引いて出た駅で降りて観光をする
あと、食事もする
④ 観光したら、その路線は『制覇』とし、次のくじを引く
⑤ これを繰り返し、東京の地下鉄の全ての路線を駆使し、存分に大阪兄弟に東京観光してもらうことを目的とする

このルールがあとあと"効いてくる"ことになるわけだが、それはまたの機会にお話することにしよう。


それからああだこうだと言い合いながら、どれぐらい歩いただろうか。日本橋駅の改札は、意外と遠いところにあった。
全員で都営地下鉄・東京メトロ共通の一日券を購入し、自動改札をくぐる。程なくして、我々を目的地へ運んでくれる地下鉄がホームにすべり込んできた。

Metron06


さて、実際に一之江に向かうべく地下鉄に乗り込んだわけだが、冒頭で述べた通り、行くところが全く思い浮かばない。住宅街に行ってもしょうがないんだよなぁ…と思いながら、駅周辺の地図をぼんやりと眺めてみても、やっぱり住宅街と川とコンビニぐらいしか見当たらない。
途方にくれていると、同じく地図を眺めていた吉田氏が、突然こんなことを言い出した。

吉田「このとんがったところに行きたい!」

Metron07

まぁそりゃ、地図を見る限りはとんがっているけれども、そんなところに行っても…と思っていると、なんとそれに食いついたヤツがいる。
次男くんだった。

次男「由緒正しいとんがりかもしれないよ?」

それを聞いた吉田氏、食いついてもらってうれしくなったのか、声のトーンが明らかに一段上がった。

吉田「とんがったところからこんな島が見えるよ! この島がどんな島かはしらないけどね!」

さらに調子に乗る吉田氏。この人も、調子に乗り始めると止まらない。

吉田「一之江駅からタクシー乗って運ちゃんに『おーい、とんがったとこ行ってくれ』って言いたいねぇ」
高倉「とんがったとこ行ったらきっとアンタこう言うよ、『意外ととんがってないね』って」

結局、きっと水がバックだから写真映えするに違いないだの、今日は天気がいいから水辺は開放的で気持ちよさそうだだのという話になり、その『とんがったとこ』我々の観光スポットとすることになった。
行くところが全くないよりはマシだろう、ということである。ひどい話だが、止むを得ないのだ。他にいい観光スポットがあれば、今からでも教えていただきたいものである。

行き先が決まってからも、地下鉄の中でひたすら地図を眺め続ける「地図マニア」が3人いた。
吉田氏と大阪兄弟である。

吉田「ここここ! ここ! この細いとこ! ここ行きたい!」
長男「ここですか!」
吉田「そう!ここだよ! もしかして、そろそろ通過するんじゃないのか?」

彼らがそう言っている間に、地上に出て走り続けていた電車はその「細いとこ」あたりを通過していく。

吉田「ほらほらほら! 今の! 今の『細いとこ』じゃない!?」

『とんがったとこ』の次は『細いとこ』で興奮しっぱなしな3人。
それとは対照的に、僕の隣にでれんと座っていた高倉仮面氏は、「俺は吉田クンのそういう心理がサッパリわからん…」とボヤいていた。


一之江駅の改札を出ると、できてからあまり時間が経っていないのか、整備された感のあるきれいな広場が眼前に広がる。しかし、ぽっかり抜けるように晴れた青い空に向かって伸びていたのは、展望台でもテレビ塔でもなく、きっと雨後の竹の子のようにできたであろうたくさんのマンションであった。天気がよくて気持ちがいいのはいいが、やっぱり観光名所なんてどこにもありゃしないじゃないかという雰囲気が一同の間に漂う。

だが、吉田氏だけは妙に自信たっぷりである。
「観光の名人! 大丈夫! イッツ大舟ライディング!」なんて言い放ち、胸をドンと叩いてみせた。自ら選んだ場所(つまり『とんがったとこ』)で、お前らをたっぷり楽しませてやるよ、と言いたいようだ。
そこまで言うなら、楽しませてもらおうじゃないか。我々は、泥舟に乗ったつもりでその『とんがったとこ』へ向かうことにした。

地図を頼りに川べりを歩き、水門を通過する。
さらにしばらく歩くと、『交通公園』という看板と、モノレールの自転車版のようなものに乗ってはしゃぐ子供の姿が見えてきた。道端に停まっていたホットドッグ売りのミニバンを横目に、地図らしいものが書いてある案内板に近づくと…

Metron08

ホントにとんがっている。
どうやら、ここが我々の目的地のようである。

吉田・次男「これだ!! 『とんがったとこ』だ!!」

そう言うやいなや、その突端に向かって走っていく吉田氏と次男くん。
吉田氏は勝ち誇ったようにふんぞり返り、次男くんは両手を上に挙げて『とんがったポーズ』をしながら飛び跳ねて喜びを全身で表現している。

でも…

Metron09

予想通り、あんまりとんがってないのは、きっと気のせいじゃないと思うんだが。
ねぇ、吉田さん?


さて、目的地に無事到着したので、「観光をする」というミッションは無事終了ということになる。
ということは、残るは「食べる」ミッションなのだが、この『とんがったとこ』の周辺、東京名物どころか飲食店やコンビニも、ひいては自販機すらもなさそうな雰囲気である。

さっき素通りした、ホットドッグ売りのミニバン以外は、何も。

その黄色くてやたらと派手なミニバンは、『とんがったとこ』からちょっと戻ったところにまだ停まっていた。車体には「大學堂」と書かれている。そういえば、以前神保町あたりでも同じミニバンを見かけた記憶があったが、どうやら都内を販売エリアとしてあちこちに出没するホットドッグ屋さんらしいということがわかった。
一応こちらを拠点としているのなら、きっと大阪では食べられないホットドッグなんだろう。そんな理由で、今回食べる"東京名物"は『チーズドッグ』に決定した。そして、東京駅で買ったずんだ団子は、本当に食べ物屋が何もない駅を引いたときの緊急手段として食べられるよう、しばらく食べずに取っておくことになった。
それはいくらなんでも無茶苦茶だという声が聞かれそうだが、そもそもこの企画自体が無茶苦茶なんだから、せめてそのあたりには目をつぶっておいていただきたい。

Metron10

出来たてのホットドッグを受け取って再び『とんがったとこ』に戻り、適当なことを言いながらそいつをむしゃむしゃと食う我々。

長男「けっこううまいですね!」
吉田「とんがっているからだよ!!」
長男「味にとんがりがありますね!」

その後、あまりの天気の良さに5人とも骨抜きになったのか、しばらく『とんがったとこ』で水辺をぼんやり眺めたりして、ぐだぐだとゆったりした時間を過ごした。本当は、公園にあったモノレールの自転車版のようなものに乗って「わーい」なんて言ってみたかったが、子供がいっぱい並んでいたのでさすがに断念。それだけが少し心残りであった。

それはそうと、いつまでもとんがっているわけにはいかない。
我々の本来の目的は東京の地下鉄を全路線制覇することであり、そのためにはあと12回もくじを引かないといけないのだ。
…ということは、あと12回、何かを食べないといけないのか。想像すると、ちょっと気が遠くなった。

まぁとにもかくにも、次に行くと決まったら『儀式』をやらなければいけない。
5人で円陣を組み、気合いの入ったダミ声で、こう宣言する。


全員「これでー、都営新宿線はー、制ー覇ー!!


そして、次の行き先を決めるくじ引きタイムである。
話し合いの結果、大阪兄弟がひどいくじを引いたときに毎回罵倒するのもさすがに可哀相だということで、今回からは全員の持ち回りでくじを引こうということになった。
今回、高倉仮面氏が路線を、僕が番号を引いた結果は…

Metron11

『M-15』。
路線図で確認したところ、丸ノ内線の『霞ヶ関』駅のようだ。
全員から「おぉー」という歓声のような声が漏れる。
首都圏の中枢部が目的地になるというのは、去年のツアーも含めて今までになかったことだからだ。なんだか社会科見学のような気分だが、長男くんが「国会議事堂が見れますね!」と早くも喜び気味だったので、まぁよしとすることにした。

日本の中枢・霞ヶ関は、我々に一体どんな顔を見せてくれるのだろうか。
一行は、ゆっくりと一之江駅を、そして霞ヶ関を目指して歩き始めた。
封筒をしまうのにちょっと手間取って出遅れた僕は、こっそり用意していた『はずれくじ』をそっと3枚茶封筒に入れ、みんなの後を追った。

つづく。

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メトロン星人東京をゆく【1】

運の悪い人は安心するがよい。
なぜなら、なおいっそうの悪運に陥る心配はないから。
                       ──オーヴィット/詩人



3月のある日だっただろうか。
いつものようにパソコンに向かって仕事をしていたら、「ヴーーン」という音が微かに聞こえた。妙に長いこと鳴っているなぁと思ったら、机の端に置いてあった自分の携帯電話のランプが点滅し、ブルブルと震えていたのである。折りたたみ式の携帯を開くと、画面に『着信 高倉仮面』という表示が出ていた。
僕は慌てて電話を取りながら、小走りでベランダに向かった。

確か、このときの会話はこんな感じじゃなかったかと記憶している。

たい「どーも、ご無沙汰してます」
高倉「今大丈夫?」
たい「大丈夫ですよ。どうしました?」
高倉「いやさ、『大阪兄弟』がこっちに来るみたいでさ」
たい「なに!! いつですかそれは?」
高倉「ゴールデンウイークだよ。それで、ぼちぼち決めなきゃと思ってな」
たい「お、それってちょうど1年前と同じ時期じゃないですか! そりゃ、やんなきゃ!」
高倉「そうだよ、やるよ?」


さて、ここで『1年前』の出来事について、簡単にご説明しておこう。

僕の友人の中に、『バカ長男』と『アホ次男』という、いかにもコテコテの大阪風なあだ名を持った連中がいる。そんな彼ら2人組、通称『大阪兄弟』とはもう数年来の付き合いになる。
その2人が、東京に遊びに来る機会があった。去年の5月3日と4日のことだ。
出迎えたのは、僕と、こちら側の共通の友人『高倉仮面』氏と『吉田ナゴヤ』氏である。
「彼らがせっかくわざわざ東京まで出てくるんだから、彼らに思う存分東京を観光してもらおう」と結託した我々3人は、彼らのために"とある企画"を用意した。

「目的地の『区』をくじ引きにして、2日間ひたすら東京23区を観光し続ける」

という、話を聞くからにとんでもなく頭の悪い企画である。
そして、頭の悪い我々は、実際にその企画を実行してしまったわけだ。まぁとにかくいろいろと常識を外していたが、1年経った今でも鮮明に記憶に残っているぐらいインパクトの強い小旅行となった。その模様は過去のエントリに詳細に書いてあるので、もしお時間があればご一読頂きたい。

で、早い話が、今年もそれっぽいことをやろうというわけなのだ。


さて、やるということ「だけ」は決まったものの、実際のところはやる企画そのものが決まらないと話にならない。ない知恵を絞っていろいろ考えてみたのだが、こいつがなかなかすんなり決まらなかった。

いちばん最初に出された案が、去年に引き続きもう1回『東京23区くじ引きツアー』をやるというものだ。くじというランダム要素があるため、去年と同じ回り方をする確率はほぼゼロに近い。でも、やはり2年続けて同じことをやるというのは新規性も何もあったものではないので、あえなくボツとなった。

それじゃあ少し工夫をしてみようということで出てきたのは、『東京23区食い倒れツアー』という案だ。くじ引きをするまでは去年と一緒なのだが、東京でしか食べられないものを行く先々で大阪兄弟に食べさせるというものである。いいアイデアだと思ったが、「2日で23食か…」という高倉仮面氏のつぶやきに恐ろしく非現実的なものを感じ、これもボツとなった。

くじを引かずに『2日で東京23区完全制覇』という話も挙がったが、綿密なルートを計画するのがめんどくさいという理由でボツ。『関東近郊秘宝館巡り』なんてのも考えたけれど、都内から遠いので、これもボツ。『横浜18区』は、横浜市中区以外はほとんど住宅街だからやめておこうという話になり、ボツ。『1都6県』はいくらなんでも金と体力を浪費しすぎて厳しいので、やっぱりボツ。

そうやって企画を挙げては片っ端からボツにしていく中で、ひとつだけ生き残った案があった。


駅ナンバリング』という言葉を聞いたことがおありかと思う。

言葉は聞いたことがなくても、字面から内容を想像するのは容易い。平成16年4月1日から東京の地下鉄で導入された、「丸ノ内線の東京駅はM-16」のような感じで路線名や駅名に記号・番号を併記してあるアレだ。東京都のホームページには、「外国人旅行者をはじめとして、誰にでもわかりやすく東京の地下鉄をご利用いただくため、地下鉄の路線名や駅名に固有のアルファベットや番号を併記」したものだという説明がある。

しかしだ。
我々は外国人旅行者ではないし、ましてや東京在住である。日本語もちゃんと理解できるし、どこまで何線に乗ってどこで乗り換えればどこに着けるのかもだいたいわかる。だから、『駅ナンバリング』なんていうものは、我々にとって全く必要のないものだという考えでいたのだ。

…『駅ナンバリング』が、くじ引きの「くじ」を作るのにうってつけのシステムである、という事実に気がつくまでは。

気づいてからが、早かった。
すぐに、以下のような企画のカタチが出来上がっていった。

① 地下鉄の路線を表すアルファベットをひとつのくじに、それぞれの路線の各駅に振ってある駅番号をもうひとつのくじにする
② くじを引いて出た駅で降りて観光をする
③ 観光したら、その路線は『制覇』とし、次のくじを引く
④ これを繰り返し、東京の地下鉄の全ての路線を駆使し、存分に大阪兄弟に東京観光してもらうことを目的とする
⑤ 大阪兄弟には、今回もやっぱり当日まで内容は秘密

いろいろ話しているうちに、去年と違って今回は観光するところのない駅が多そうだがどうしようという難題が出てきたが、「まぁなんとかなる、とにかくやっちゃえ」ということになった。

やることさえ決まれば、あとはすることといったら決まっている。
くじを作って茶色い封筒に入れ、『東京地下鉄便利ガイド』という地下鉄の駅周辺地図と周辺情報満載の本を購入して準備完了である。


そして、当日。

Metron01


待ち合わせ場所の銀の鈴に着くと、すでに吉田氏が待っていた。
「1年ぶりの銀の鈴だねぇ…」とつぶやきながら、銀色に鈍く光るその待ち合わせのシンボルを2人で眺めていると、去年の思い出が走馬燈のように頭の中に浮かんでは消えていった。
しばらくしてから高倉仮面氏が到着。そして、間もなく大阪からの新幹線が到着する時間となり、大阪兄弟の2人が銀の鈴待ち合わせ広場に姿を見せた。

5月3日、昼の12時。ようやく、全員が揃った。
久しぶりの再会に、全員の顔から思わず笑みがこぼれる。

高倉仮面氏の「まずは、なんか食うものを買いたい」といういきなりの提案で、デパ地下でずんだ団子を購入した我々は、東京駅の丸の内中央出口へと向かうことにした。そこが去年の旅のスタート地点であり、終着点だったからだ。
通路を抜けて広場に出ると、さわやかな五月晴れの青い空が広がり、赤レンガ造りの駅舎は相も変わらずその存在感と風格を漂わせていた。歩く横で駅舎をスケッチしている人たちも、なんだか気持ちがよさそうだった。

さて、いくら天気がよくて気持ちもいいとはいっても、いつまでもこの場所に留まっているわけにはいかない。だから、我々東京組は早々と口火を切ることにした。今回の企画の内容を大阪兄弟に発表する時間がやってきたのだ。
何も知らされていない彼ら2人の顔に、緊張の色が走る。

高倉「まずはだ、今回の旅には『主役』がいるんだ」

高倉仮面氏はそう言うと、おもむろにカバンの中からコイツを取り出した。


Metron02


高倉「『メトロン星人』だよ」
長男・次男「なんでだ───!!」

企画を発表されると思いきや、いきなり脈略のなさそうな『メトロン星人』のビニール人形を取り出されるとは、さすがに予想していなかっただろうと思う。すっかり虚を突かれたのか、彼らはひたすら笑うしかなかった様子である。

ここでご存じない方のためにご説明しておくと、『メトロン星人』とは、『ウルトラセブン』に登場する地球侵略を企てる宇宙人である。そんな特撮もののキャラクターが今回の企画にどう関係してくるかというと…、

つまり、こういうことなのだ。

高倉「ところでキミ達、東京には地下鉄の路線がいくつあるか知ってるか?」
長男「い、いや、知らないですよ?」
たい「全部でだいたい13コぐらいあるんだよ。都営地下鉄とか、東京メトロとか」
次男「メトロ!??」
高倉「これでもうわかったね、今回の企画は
   『メトロン星人と東京メトロでゆくメトロポリスの旅』だ!」
次男「…おい、ダジャレかよ!!」

ダジャレかよと言われてもしょうがない。
今回の企画は、そう決まってしまったのだから。


Metron03


さぁ、内容を理解してもらったら、あとは彼らに我々の行き先を決めてもらわねばならない。まずは、長男くんに乗る地下鉄の路線を、次男くんに駅番号を決めてもらうことにしよう。
僕がカバンの中から茶封筒を取り出すと、それを見た大阪兄弟は「出た!!」と叫んだ。「それ」が去年彼らをさんざん苦しめた「行き先はくじ引きで決める」ということを意味するのを瞬時に理解したようである。長男くんは逃げるように後ずさりをし始め、両手をポケットに突っ込んで体を縮こめるようにして、くじを引くのを頑なに拒む。

長男「いやだぁぁ!! いやだぁぁぁ!!!」
たい「こら! いいから引け!」

いやがる彼らの手を無理矢理茶封筒に突っ込み、1枚ずつくじを引かせたその結果は…


Metron04


『S-18』。
地下鉄の路線図でそれがどの駅にあたるかを見ると、都営新宿線の『一之江』とある。

イヤな予感がした。
自分の知る限りでは、観光名所のようなところがひとつもなさそうな駅なのだ。
あまりの微妙さに一瞬みんなの動きが止まり、「そんなところに行って何の意味があるんだ?」という空気が流れた。
そして、せきを切ったように、罵り合いが始まった。

吉田「おい、アレか? これは…もしかして、最初っからやらかしたのか?」
次男「だからそういうところに行くくじ作る方が悪いんだって!」
たい「そういう駅引く方が悪いんだろ!」

やれやれ、今年もまたくじの神様は我々を楽しませてくれそうである。
罵り合いを続けるみんなを横目に見ながら、僕は腹を据えて一呼吸置き、声を上げた。

たい「よーし、今から一之江に行くよー」

こうして、我々の『メトロン星人と東京メトロでゆくメトロポリスの旅』はスタートを切ることとなった。今年は一体何が我々を待ち受けているのかこの時点では誰も知らないまま、まだ元気な5人は一路『一之江』駅へと向かう。

つづく。

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東京23区くじ引きツアー【あとがき】

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これを書いている今は、もう7月も中半。関東では梅雨明け宣言も出されました。
でも、あの5月の連休中のとんでもない2日間のことは、2ヶ月以上経った今でも鮮明に記憶の中に刻み込まれているのです…。


思い返せば、本当に「無茶苦茶だ」という以外に言いようがないこの『東京23区くじ引きツアー』。最初のところは、正直疲れるだけでたいしたことのない遊びなんだろうと思っていました。
それが、気がつけばその記録が全13話、400字詰め原稿用紙にして120枚オーバーの大長編にまで"成長"し、旅の思い出は僕ら5人の記憶に深く刻み込まれることとなったのです。
そうなったのには、3つの『理由』があると、僕は思っています。


◆記憶に残った理由その1【本気で遊ぶということ】

最近の『遊び』といえば、まず「飲みに行く」とか「カラオケする」「ゲームする」とかいう、簡単にまとめると『発散する』タイプの遊びが多い気がします。これらの遊びに共通して言えることというのは、『受け身であること』だと思うんですよ。

飲み屋に行けば、お酒が飲める。
カラオケ屋に行けば、歌が歌える。
ゲーム機があれば、ゲームができる。

どれも、ある程度のレベルまでの面白さというのは保証されますが、それが記憶に残り続けるほどのものか?というと、決してそうではないことの方が多いのではないでしょうか。

子供の頃の『遊び』を思い出してみましょう。
「ちゃんと遊べるように」そして「その遊びが面白くなるように」と、自分たちで新しいルールを作ったり、既存のルールを変えたりとあれこれ工夫して遊んでいませんでしたか?
そういう『何かを創り出す』タイプの遊びをすることって、大人になってからめっきり減ってしまったんじゃないか。そういう気がするんです。

この『東京23区くじ引きツアー』という企画、

◇くじの引き方がひどいと、遣う時間の大半が移動時間になってしまう
◇もし目当ての場所があっても、行ける可能性がかなり低い
◇無駄に体力と金と時間だけを消耗することが懸念される
◇引いた区にロクな観光スポットがなかったら途方に暮れるしかない
◇そもそも、23区制覇なんて1日や2日じゃ無理

なんていう、冷静に考えればネガティブな要素ばっかりが揃っていたわけですが、そんな状況の下で5人全員でルールを作り、それに従うことによって罵り合いすらも楽しむためのスパイスに変えていった。そういう意味では、このツアーは『参加した全員で何かを創り出す』タイプの遊びとして成功したんじゃないかと考えています。
もちろん、実際に罵り合っているときは「なんでこんな目に…」なんて激しくダウンしているわけなんですが…。

自分がその遊びを楽しくする努力を微塵もしない上で「つまらなかった」と文句だけたれるのはただのナンセンス。遊ぶ以上はやっぱり参加する全員が本気で、そしていい意味でバカになって遊ぶのがよいんではないかなぁ。あのツアーを経験してから、そう考えるようになりました。


◆記憶に残った理由その2【事細かに記録するということ】

「なんでここまで細かいセリフまで覚えてるんだ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんので、念のため。

なんせこのツアー、上に書いたようなとんでもない逆境の中で進行したもんですから、数々の『名言』というヤツが次々と発せられてくるわけです。それを忘れてしまうのはもったいない!ということで、時間が経って記憶が薄れてしまう前に携帯メールとして『名言』の簡単なメモ(場所とセリフ)をぷちぷち入力し、自分のPCのメアドに宛てて送る───。こんな作業を、ツアー中こっそり繰り返していました。決してセリフを後から作っていたというわけではないということをご理解頂きたく。

それに加えて、「ブログのネタになるなぁ」という軽い気持ちでデジカメを持参してパシャパシャとあれこれ撮ったりしていたら、気づけば2日間で撮った写真は272枚。こいつらと上の『名言リスト』とを照らし合わせると、ツアー中に起こった出来事の一部始終を、時間を追って思い出せるというわけです。

こうやってみると、人間が1日で経験することというのはものすごく莫大な情報量から成っているという事実に改めて気づかされます。それを活かすも殺すも自分次第。なるべくなら、先のことにそれを活かせるような、記憶と記録の両方に残るいろいろな経験をしたいもんです。


◆記憶に残った理由その3【再発見というもの】

実は、このツアーの翌日、高倉仮面氏から「『練馬大根の碑』ってヤツがどーしても気になるんだけど」などというわけのわからない電話がかかってきまして。
断り切れず、結局こんなところに行ってきました。

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『大根の石碑』というので、どれだけ人をおちょくった石碑なのかと思っていたら、

23kuji81

高さ3~4mはあろうという、けっこうしっかりとした石碑でした。
「練馬大根の沢庵漬けが全国区の名産品になった記念に昭和16年に建てられた」のだそうです。考えていたよりもだいぶ立派なもので、高倉仮面氏と「意外としっかりしてたねぇ」などと誉めたりしていました。
ツアー中にもし練馬区行きが決定していたら、きっと真っ暗な中でコレを見ることになっていただろうと考えると、背筋が凍る思いがしますが…。

さて、こんな石碑が練馬区にあったということを知っていた方は、どれぐらいいらっしゃったでしょうか。恐らく、地元の方でも知らない方が多いんではないかという気がします。

上記の行動や、ツアー本編の行き先を見て頂いてもわかる通り、実はこのツアーには『東京再発見』というテーマが隠されていました。
東京に住んでもう29年近くになるわけですが、名前を知っているけれどもまだ行ったことがないような場所、それどころか存在すら知らない場所というのがあちこちにある。そんな場所をこのツアーで回ることができたらお得じゃないか、というわけです。
そして実際、『投込寺』や『草刈の碑』など、ふつうの観光ではお目にかかれないような観光スポットに足を運ぶことができたということは、純粋にとても新鮮で「あぁ、東京にもこんなところがあったんだ」という再発見の喜びに溢れていました。

「江戸時代に虫歯の痛みに耐えかねて切腹した人が祀られている碑がある」(荒川区・日枝神社)とか「奈良・鎌倉に次ぐ日本で3番目の高さの大仏は東京にある」(板橋区・東京大仏)などなど、このツアーをやるまで知らなかったことが、まだまだこの東京にはたくさんあるようです。その事実を『再発見』できただけでも、このツアーをやった価値があったんではないかと思うわけです。


何も、「ここまでやれ!」というわけではありませんが。
読んで下さった方の中に、いつもと同じ生活で飽き飽きしているという方がもしいらっしゃいましたら、このツアーほど無茶をしろとは申しませんが、慣れた街を歩くときに普段通る道から1本外れた道を通ってみることをオススメします。
何かおもしろい看板でも発見したら、ちょっぴりお得な気分に浸れるはずですから。


ちなみに、ツアーの同行者も、やはりあれこれ触発されてしまったようです。
吉田ナゴヤ氏が、彼の目から見た『東京23区くじ引きツアー』を彼のブログで書いていますので、そちらと読み比べて頂いてもうれしいです。
また、次男くんことふじやん氏も、大阪に帰ってからホントに大阪24区をあれこれ回り始めたようです。どこまで続くのかは彼の忙しさ次第ですが、無理のないように続けてほしいものです。


さて。
この『よもだ』はまた"ふつうのブログ"に戻って、適当なペースでつらつらとよもだな記事を書いていくつもりですが、よろしければまた今までと変わらずお付き合い頂きたいと思います。

最後に、あのとんでもないツアーを最後まで一緒に乗り切った高倉仮面氏、吉田ナゴヤ氏、長男くん、次男くん、
そして、あのとんでもなく長くて拙い文章を最後まで読んで下さった皆さん、コメントを下さった方々に、この場を借りて感謝の言葉を述べさせて頂きます。
ありがとうございました。

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東京23区くじ引きツアー【データ】

2005年 5月 3日(火・祝)

【 ま ず は こ こ か ら : 1 番 目 】
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◇写真:東京駅前
◇観光:東京駅前にて記念撮影
◇リンク:
東京駅(公式HP)

━ ━◆ 千 代 田 区 → 荒 川 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
◇東京-三ノ輪
・東京-上野 :150円 【JR山手線】
・上野-三ノ輪:160円 【営団地下鉄日比谷線】
総計:310円
移動:5.9km


【 い き な り バ バ : 2 番 目 】
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◇写真:浄閑寺の門の前
◇観光:浄閑寺内、永井荷風の歌碑
◇リンク:
浄閑寺(未完成HP)

━ ━◆ 荒 川 区 → 北 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
◇三ノ輪-赤羽
・三ノ輪-上野:160円 【営団地下鉄日比谷線】
・上野-赤羽:160円 【JR京浜東北線】
総計:320円
移動:12.0km


【 意 外 と 当 た り : 3 番 目 】
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◇写真:旧岩淵水門の先の小島、荒川をバックに
◇観光:旧岩淵水門、草刈の碑、「まるます屋」のうなぎ弁当を食す
◇リンク:
まるます屋(赤羽一番街商店街HPより)
旧岩淵水門(北区HPより)

━ ━◆ 北 区 → 江 戸 川 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
◇赤羽岩淵-葛西臨海公園
・赤羽岩淵-新木場:270円 【営団地下鉄南北線(赤羽岩淵-飯田橋) → 営団地下鉄有楽町線(飯田橋-新木場)】
・新木場-葛西臨海公園:150円 【JR京葉線】
総計:420円
移動:26.4km


【 い ち ば ん 最 初 の 大 移 動 : 4 番 目 】
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◇写真:水上バス 葛西臨海公園発着所内、東京湾をバックに
◇観光:葛西臨海公園を散策、水上バスにてお台場へ移動
◇リンク:
葛西臨海公園(公式HP)
東京水辺ライン(東京都公園協会公式HP)
東京ディズニーリゾート(公式HP)
お台場(公式HP)

━ ━◆ 江 戸 川 区 → 大 田 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
◇葛西臨海公園-蒲田
・葛西臨海公園-お台場海浜公園:1000円 【水上バス 東京水辺ライン】
・お台場海浜公園-東京テレポート:0円 【徒歩】
・東京テレポート-大井町:260円 【東京臨海高速鉄道 りんかい線】
・大井町-蒲田:150円 【JR京浜東北線】
総計:1410円(移動費が一番高い)
移動:10.8km(各種電車) + 0.5km(徒歩) + α(船の移動距離)


【 今 で も 悔 い が 残 る 観 光 地 : 5 番 目 】
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◇写真:蒲田駅西口商店街アーケード前
◇観光:蒲田駅西口商店街を一周(吉田ナゴヤ氏がチンドン屋で回ったコース)
◇リンク:
蒲田駅西口商店街(仮設HP)

━ ━◆ 大 田 区 - 杉 並 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
◇蒲田-高円寺
・蒲田-高円寺:380円 【JR京浜東北線(蒲田-神田) → JR中央線快速(神田-中野) → JR総武線(中野-高円寺)】
総計:380円
移動:30.5km(コースミスの為、一番長い移動に)


【 こ れ で も 観 光 と 言 い 切 る : 6 番 目 】
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◇写真:高円寺純情商店街アーケード前
◇観光:高円寺純情商店街内のドラッグストアにてドリンク剤を一本飲む
◇リンク:
高円寺純情商店街(公式HP)

━ ━◆ 杉 並 区 - 足 立 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
◇高円寺-北千住
・高円寺-御茶ノ水:210円 【JR中央線快速(高円寺-御茶ノ水)】
・新御茶ノ水-北千住:190円 【営団地下鉄千代田線】
総計:400円
移動:22.1km


【 や ら せ じ ゃ な い 、 ガ チ だ : 7 番 目 】
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◇写真:北千住駅前
◇観光:ハッピーロード商店街内、「くいものやBAR」にて食事
◇リンク:
くいものやBAR[バール](北千住商店街HPより)



2005年 5月 4日(水・祝)

【 こ こ ら で マ ジ メ に 観 光 し と か な : 8 番 目 】
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◇写真:上野公園内、西郷隆盛像前
◇観光:上野公園周遊、アメヤ横丁周遊。「東京メロンパン 焼栗屋」のメロンパンを食す
◇リンク:
上野公園(公式HP)
西郷隆盛像(台東区HPより)
アメヤ横丁(公式HP)
東京メロンパン 焼栗屋(アメ横センタービルHPより)

━ ━◆ 台 東 区 (上 野) → 台 東 区 (浅 草) ◆━ ━ ━ ━ ━
◇上野-浅草
・上野-浅草:160円 【営団地下鉄銀座線】
総計:160円
移動:2.2km


◇写真:浅草寺 雷門前
◇観光:浅草散策。仲見世商店街、浅草寺にてお参り、花やしき、六区、太鼓館にて打撃演奏、テプコ浅草館にて相撲展鑑賞
◇リンク:
仲見世商店街(公式HP)
浅草寺(浅草名所七福神HPより)
花やしき(公式HP)
太鼓館(公式HP)
テプコ浅草館(公式HP)


◇お食事処候補のリンク(浅草うまいもの会HPより)
・リスボン(浅草内では他の洋食店に比べてちょっと安め) ※良いリンクを発見できず…。
浅草 今半(公式HP)(ご存知、すき焼き屋の老舗。バカ高くて挫折)
大黒屋(天麩羅屋の老舗。大行列で諦めた)
飯田屋(柳川鍋の老舗。微妙に高かった)
神谷バー(元祖デンキブラン。ここも大行列)
ヨシカミ(うますぎて申し訳ないス! 行かなかった)

━ ━◆ 台 東 区 → 新 宿 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
◇浅草-新宿
・浅草-神田:160円 【営団地下鉄銀座線】
・神田-新宿:160円 【JR中央線快速】
総計:320円
移動:13.4km


【 コ ン ク リ ー ト ジ ャ ン グ ル : 9 番 目 】
09_shinjukuku

◇写真:東京都庁前
◇観光:「東京麺通団」にてうどんを食す、東京都庁展望室より東京を眺める
◇リンク:
東京麺通団(麺通団HPより)
東京都庁(公式HP…もなにも、東京都そのもののHP)
東京都庁展望室(東京デートナビHPより)

◇参考お食事処リンク
もうやんカレー(公式HP)
インド式カレー*夢民(公式HP)

━ ━◆ 新 宿 区 → 葛 飾 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
◇新宿-柴又
・新宿-日暮里:190円 【JR山手線】
・日暮里-柴又:250円 【京成本線(日暮里-京成高砂) → 京成金町線(京成高砂-柴又)】
総計:440円
移動:22.9km


【 目 を 閉 じ れ ば 聞 こ え る あ の 歌 : 1 0 番 目 】
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◇写真:柴又帝釈天前
◇観光:帝釈天参道、柴又帝釈天、矢切の渡し鑑賞
◇リンク:
葛飾柴又HP(帝釈天参道のお店紹介等)
帝釈天(葛飾区産業情報HPより)
矢切の渡し>(葛飾区産業情報HPより)
松屋の飴総本店(葛飾柴又HP。飴切り音頭)

━ ━◆ 葛 飾 区 → 世 田 谷 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
◇柴又-等々力
・柴又-押上:180円 【京成金町線(柴又-京成高砂) → 京成押上線(京成高砂-押上)】
・押上-中延:310円 【都営地下鉄浅草線】
・中延-等々力:150円 【東急大井町線】
総計:640円(船を除けば、移動費が一番高い)
移動:30.3km(大田区-杉並区の移動ミスを除くと、一番長い距離の移動)


【 都 会 の オ ア シ ス : 1 1 番 目 】
11_setagayaku

◇写真:不動の滝前
◇観光:等々力渓谷散策
◇リンク:
等々力渓谷(公式HP)

━ ━◆ 世 田 谷 区 → 豊 島 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
◇等々力-池袋
・等々力-渋谷:210円 【東急大井町線 (等々力-二子玉川) → 東急田園都市線(二子玉川-渋谷)】
・渋谷-池袋:160円 【JR山手線】
総計:370円
移動:19.7km


【 も っ と 観 光 し た か っ た : 1 2 番 目 】
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◇写真:サンシャイン60前
◇観光:東武百貨店にてお土産購入、サンシャイン60鑑賞
◇リンク:
東武百貨店・池袋店(東武百貨店HPより)
サンシャインシティ(公式HP)

━ ━◆ 豊 島 区 - 千 代 田 区 ◆━ ━ ━ ━ ━
・池袋-東京:190円 【営団地下鉄丸ノ内線】
総計:190円
移動:8.7km


【 帰 っ て き た ぜ 東 京 : ラ ス ト 】
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◇写真:東京駅前
◇観光:東京駅前にて記念撮影
◇リンク:
東京駅(公式HP)


制覇した区 12区
総移動距離 約210km (参考までに… 東京-静岡:180.2km)
移動費総計 5360円
食費     4000円程度

費やした無駄な時間 priceless

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東京23区くじ引きツアー【13】

今回の『サスペンスドラマの定番』
 赤を切るか、青を切るか。
 悩んだ挙げ句、主人公は目をつぶり、勇気を振り絞ってニッパーでコードをぷちっと切る…


上に書いたような「爆弾を解体するシーン」というヤツを、ときどき映画やテレビドラマなんかで見かける。最後には、決まって赤と青の2本のコードのどちらを切るか悩む場面が出てくる。
間違った方を切ってしまえば、当然爆弾は爆発し、ジ・エンドである。


ここまで大げさではないが、これと似たようなシーンに、我々は直面していた。
場所は世田谷区の等々力渓谷、時刻は18時45分。
この場合の『爆弾』は、残り12枚のくじが入った茶封筒である。大阪兄弟が最終の新幹線に乗って大阪に帰る、21時18分という『タイムリミット』を前に、残りが最後の1枚になるまで茶封筒の中からひとつひとつくじを抜いていくという、いわば『解体作業』の真っ最中であった。
解体作業は進み、茶封筒の中には、2本の『コード』ならぬ2枚のくじが残るのみとなったところである。
その2枚とは、『豊島区』と『練馬区』。
そのどちらか1枚だけを引き、最後に茶封筒の中に残った方に移動するというわけだ。
ちなみに、夜になってから行ける観光スポットが皆無な『練馬区』が残ってしまうということは、我々にとってまさに"死"を意味するということを改めて述べておく。

最後にくじを引くのは、高倉仮面氏。
しばらく悩んだ挙げ句、彼は、勇気を振り絞り、

「これだッ!!!」

と叫び、1枚だけを抜き取った。

高鳴る鼓動。否が応でも高まる緊張。
我々の行き先は、"生"の『豊島区』か、それとも"死"の『練馬区』か───。


彼が、引いたくじに書かれていた文字を、恐る恐る読み上げた。


高倉「…ん? 『練馬区』?」
たい「…と、いうことは、残ったのは『豊島区』か!?」
全員「うおー!!! よくやったぁぁぁぁぁ!!!!!」

これまでさんざん運が悪かった大阪兄弟ではなく、高倉仮面氏が引いたからなのか。それとも、くじの神様がいい加減に慈悲をくれたのか。
まぁ理由はどうであれ、とにかく『夜の練馬区』行きを免れたのだ。ここはもう手放しで喜ぶ以外になかった。

かくして、このツアー最後の目的地は『豊島区』に決定したのである。
全員心の底から安堵し、深いため息をつきながら、目的地に向かうべく等々力駅を目指して歩いていった。


しかし、「ホントよかったよねぇ」などと言ってはいるものの、大阪兄弟と吉田ナゴヤ氏の様子がどこかおかしい。彼らの口からは、時折『これで終わり』とか『品川』とかいう、これから『豊島区』に向かおうとしている我々には関係のない単語ばかりが聞こえてくるのだ。
要約するに、どうやら彼らは
「もう時間もないし、『豊島区』なんてどうでもいいから、新幹線が通っている品川駅まで行って、そこでのんびり夕食でもとってこんなツアーなんざとっとと終わりにすんべ」
なんてことを言っているようである。

僕は、耳を疑った。
この3人は、「疲れたから」という理由だけで、何もかも投げ出してしまおうというわけだ。あれだけ心臓に悪くも当たりくじを引いた"奇跡のくじ引き"も、ただの冗談で済ませてしまおうというわけである。

そりゃ、ここまで来るには決して楽なことばかりじゃなかった。
恐ろしいぐらいのくじ運の悪さ、異様に体力を消耗する大移動、そもそも内容からして無茶苦茶なこの企画。
それらの困難をなんとか乗り越え、いろいろと振り絞るものを振り絞ってここまでやってきたのだ。あと2時間ちょっとがんばれば、23区は全部回りきれなかったものの、まぁそれなりに区切りのいいそれなりの形で終われるはずである。そう考えたら、もう一押ししようという気力が湧いてくるのが普通というもんじゃないのか。
それを、ここで逃げてしまったら、締まるものもちーとも締まらなくなってしまうじゃないか。

そう思い、僕は密かに決意した。
このツアーが終わるまでは、鬼になろうと。
どれだけごねようが、このツアーを敢行すべく、最後の最後まで引きずり回してやろうと…。


さて、等々力駅に着いた我々は、どういうルートで次の場所に行こうかと、しげしげと路線図を眺めていた。東京といえども、普段あまり乗らない路線はどこまで切符を買ったらいいのかわかりづらいものである。
「切符、どこまで買ったらいいの?」と、吉田氏が訊いてくる。

目的地の『池袋』に行くには、1回乗り換えをして『渋谷』まで行くのが最短ルートとなる。
しかし、困ったことに、品川まで行く最短ルートというヤツが存在した。渋谷に向かうのと反対側の電車に乗って行った先の終点『大井町』は、品川までわずか1駅だったのだ。
当然の如く、吉田氏は品川に行くつもりで「どこまで買ったらいいか」と訊いてきている。そんな彼にとっては、『渋谷』という答えはあまりにも不自然である。

そこで、考えた。
金額だけ教えれば、ころっと渋谷行きの切符を騙されて買ってくれるんじゃないだろうか、と。
いやぁ、試してみるものである。「210円」と金額だけさらりと答えると、なんとみんな疑いもせずに次々に210円の切符を買ってくれるではないか。作戦、あっけなく成功である。


僕が先にパスネットで改札をくぐりホームで待っていると、同じくパスネットで改札を通過した高倉仮面氏がこちらにやってきた。

高倉「たいさん、どこまで切符買わせたんだい?」
たい「210円って言ったら渋谷までですよ。当然でしょう?」
高倉「あー、やっぱ騙したんだ」

どうやら、彼はこの作戦に気づいていたようだった。
2人で、何が何でもヤツらを品川に行かせてなるものかと、こっそり結託する。

そんなことなど微塵も知らない3人が、ほどなくしてやってきた。
時刻表を見ると、次の電車が来るまではまだしばらく時間があるようだった。
僕と高倉仮面氏は"当然"渋谷ルート寄りのホームで電車を待つ。
しばらくしてから、品川に行く気満々の吉田氏がそれに気づいた。

吉田「おい、品川の方に行く電車はこっちのホームだろ」
高倉「何を言ってるんだい、キミ達はいくらの切符を買ったんだい?」
吉田「210円だが、それがどうした?」
高倉「品川に行くなら、何も210円買う必要はなかったんだよ。210円は渋谷までの値段だからね」
たい「渋谷行ったら、池袋まで10分ちょいですしね」
吉田「何っ!??」
高倉「キミ達は、たいさんに騙されたんだよ」

ようやく、切符を騙されて買ったことに気づいた吉田氏と大阪兄弟。
ここで渋谷ルートの電車が先に来れば美しいシナリオだったのだが、なんと品川ルートの電車が先にやってきてしまったのだ。

と、吉田氏が、いきなり実力行使に打って出た。死んでも渋谷ルートの電車には乗るまいと、1人、開いた電車のドアに飛び込んだのである。
突如、場の空気が緊迫したものに一変した。
しかし、品川ルートの電車に乗る気なんぞさらさらない僕と高倉仮面氏は、少々この吉田氏の行動に焦りを感じながらも、その場をてこでも動かなかった。
そんな吉田氏とこちら2人を何回も見比べ、大阪兄弟はどっちについたらいいのかおろおろしている。

吉田「品川行くんなら、乗らないと! 乗るんだろ!??」

そう大阪兄弟に呼びかけ、こっちに来いと誘導しようとする吉田氏。しかし、まだ大阪兄弟はどうしたらいいか悩んでいる様子である。
だが、電車はいつまでも待ってくれない。発車のベルがホームに鳴り響く。
さすがに1人では分が悪いと思ったのか。吉田氏が観念して電車を降りると、あっけなくドアが閉まり、品川ルートの電車は行ってしまった。

吉田「きたねぇぞ、お前ら!!!」

と吉田氏がわめき散らすが、僕らはもうその声に貸す耳を持たなかった。
僕と高倉仮面氏は、ゆっくりと勝ち誇ったかのように、そのすぐ後に来た渋谷ルートの電車に乗り込んだのだった。
行きたい場所があるのに、路線図を調べもしないで全て他人に任せっきりなのが悪いのだ。
こうして、このくだらない戦いは、たい・高倉連合軍の作戦勝ちで幕を閉じたのだった。


僕の目論見通りに渋谷方面へと移動を開始した一行。3駅ほど東急大井町線に乗り、二子玉川駅に到着した。
乗り換えた東急新玉川線のホームからは、真っ暗な川が目に入ってくる。

高倉「ほら、あの真っ暗なのが多摩川だ。川の向こうはもう神奈川だよ?」

2時間前は千葉県の景色を眺めていたのに、今度は神奈川県の景色である。
期せずして、江戸川の河川敷で話していた『グランドスラム』、見事に達成の瞬間だった。

そこから渋谷経由で山手線に乗り換えて池袋へ行くのには、あまり時間はかからなかった。


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20時ちょっと前ぐらいだっただろうか。
ようやく、最後の目的地、『池袋』に到着である。
人々で賑わう駅前、電飾で明るい街並み。本当に池袋が豊島区でよかったと思った。もし練馬だったら…と考えると、背筋が凍りそうであった。

ここで、横浜に行き損ねた大阪兄弟のために、東武デパートの地下食料品売り場に寄ることにした。入り口には「21時まで営業」と書いてある。最近のデパ地下はなかなか営業時間が延びていて便利なものだ。
思い思いにおみやげを選ぶ大阪兄弟を見ながら、高倉仮面氏がこう漏らす。

高倉「良かったなぁホント。この観光で買い物するタイミングってなかったからなぁ…」
吉田「お前、これが練馬だったらどうするつもりだったんだ!」

きっと、東京駅で『ひよこ』か『東京ばな奈』でも買って帰ってもらうしかなかっただろう。そういう意味でも、重ね重ね、池袋が豊島区でよかったと思った。


さて、買い物ばかりにうつつを抜かしているわけにはいかない。我々の主目的は、やはり『観光』なのだ。
人混みで賑わうサンシャイン通りをすり抜け、早足でサンシャイン60のふもとへと急ぐ。
サンシャイン60の脇にある公園の近くに、ちょうどビルを見上げるのにちょうどいいロケーションを発見した。

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さすがに時間が時間なので、サンシャイン水族館やナンジャタウンへ行くのは諦めることになった。だが、とりあえず、「サンシャイン60に来た!」という証拠写真を撮り、"既成事実を作る"ことだけは最低限やっておかなければならないのである。間に合わせと言うなかれ、等々力渓谷からわざわざサンシャイン60まで来たこと自体がもうすごいことなのだ。

よくもまぁ、ここまで来たもんだ───。
感慨深くサンシャイン60を見上げる一行。
三脚をセットし、ローアングルから集合写真をパチリとやる。

そして、いよいよ。このツアー最後の『儀式』である。


全員「これでー、豊島区はー、制ー覇ー!!

すると、間髪入れずに高倉仮面氏がこう宣言した。

高倉「そして、この東京23区完全観光は…、失敗とするっ!!!!!」
長男「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
次男「やってられるかあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

まさか、まさかの失敗宣言である。
わかっちゃいるけど、改めて聞いてみるととことんひどいセリフだ。
頭を抱えてそこら中を走り回る長男くん。次男くんなどは、帽子を拾い上げる側からまた叩きつけるのを何回も繰り返していた。


まぁそれにしても、これでようやくこのツアーも終わりが見えてきた。
もうあの忌々しいくじ引きをしなくて済むと思うと、気分がせいせいするもんだ。
今来たばかりのサンシャイン通りを逆行し、今度は地下鉄の駅に向かう道すがら、感慨深げに高倉仮面氏がぼそっとこう漏らした。

高倉「いやぁ、終わったねぇ…」
長男「よ、よ、良かったぁ! 僕、高倉さんの口から『終わった』って聞かないと、信用できなかったんですよおおおぉぉぉ!」

駅に着くと、伝言板に「二度とごめんだ!」だの「帰れる」だのと、思いの丈を書き殴る大阪兄弟。あとは、このまま地下鉄に乗って東京駅に向かうだけで、もうあちこちに引きずり回されることはないと思っていたのだろうか。彼ら2人は、本当に安心した表情をしていた。


時計を見ると、20時半を回ったところである。
東京駅に到着する時刻は、20時50分とのことだった。

…なーんだ、東京駅に着いても、まだ28分「も」時間があるじゃないか。

池袋駅から東京駅へと向かう地下鉄丸ノ内線の中でゆったりと座りながら、僕は、みんながこの悪夢のような2日間の思い出話に浸るのをぼんやりと聞きつつ、残り時間に東京駅でできることは何なのかを考えていた。
食事をする時間はさすがにない。
でも、ただ時間まで立ち話をしているのも、ちょっともったいない気がする。

そのとき、何故かはよくわからないが、ふとダイエット食品の「使用前」「使用後」の2枚の写真が頭をよぎった。
───これだ。

たい「あ、僕、すっごいイヤなこと思いついたんですけど」
高倉「なんだい? 言ってみなさい」
たい「いやねぇ、東京駅でいちばん最初と同じ構図で写真を撮りたいんですけど」

この突然の提案に、もうこのツアーは終わったものとばかりに弛緩しきっていた僕以外の4人の表情が、一瞬にして凍り付いた。
そして、もしこの日最後の新幹線を逃してしまったら…と考えたのか、再び長男くんが錯乱し始めた。

長男「た、高倉さん! 終わったんじゃなかったんですかっ!??
   これ、終わったんじゃなかったんですかっ!??!?」
高倉「い、いや…、僕は終わったって言ったけど、たいさんは言ってないからねぇ…」
長男「そそそそそ、それって…、●□×※%#¥」

もはや、何を言っているのかわからないぐらいの錯乱っぷりである。
そこまで嫌がられたら、なおさら写真を撮りに行かないわけにはいかないだろう。僕の中の『鬼モード』のスイッチが、再びパチッとONになるのがわかった。


東京駅に到着したのは、予定通り、20時50分のことだった。
「最初に撮ったのと同じ構図で、東京駅をバックに集合写真を撮りに行く」と決めた今、もうここからは最終の新幹線まで1分たりとも時間を無駄にできないのである。
電車を降りるなり、我々5人と時間との戦いが始まった。

運良く、丸ノ内線の改札を出てすぐのところにみどりの窓口を発見したので、とりあえずは新幹線の切符を大阪兄弟に買わせることにした。集合写真を撮りに行っている間に窓口に人がたくさん並び、切符を買っている間に最終の新幹線が行ってしまった、なんてことになったら、それこそ本当に洒落にならないからだ。

たい「買った? 買ったら早く写真撮りに行くよ?」
長男「ぼ、ぼ、ボク、く、9時3分の切符買いましたから!!!」
たい「買った切符を見せろ、いいから見せろ。さぁ見せるんだ」

切符は買ったものの、この期に及んで長男くんが「1本早い電車の切符を買った」だのとごね始めた。そんなわきゃないのはわかっているのだが、こんなどうしようもないやりとりをしている間にも、時間は刻一刻と過ぎていってしまう。
無駄な抵抗はやめろと言わんばかりに長男くんを詰問していると、

次男「で、どっち行きゃいいんだぁ!??」

次男くんはどうやら腹をくくったようである。
偉いぞ次男くん、それでこそ男だ。
と、こうなれば、長男くんを説得するのにも時間はかからなかった。

全員で、大急ぎで地上への出口を探す。
エレベーターの『開』ボタンを連打して地上に出ると、もうそこは一面真っ暗であった。駅前の広場で客待ちをしているタクシーの灯りが連なっているのが見える。

暗いのでよくわからなかったが、とにかく近くに見えた、いちばん最初に写真を撮ったのと同じような場所に行ってみた。
…が、どうも構図が違う。
ここじゃない。もっと奥だ。

長男くんは「もうここでいいですやん!」と、再びごねる。
もうあとちょっとでおしまいというときに、まだそんな弱音ばっかり吐き続けるのか。きっちり最初と同じ場所でないと、写真をわざわざ撮りに来た意味がないじゃないか。そういうところでの妥協を、今の僕が許すはずもないことぐらいわかってほしい。
「ダメ! ここじゃない! もっと向こう!」と彼らに言い放ち、僕はさらに奥へと進んでいった。

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やはり"奥"というのは正解だったようだ。
辿り着いた場所で、みんな口々に「あぁ、そういえばこんなとこ来たねぇ…」とつぶやく。
前日の朝、晴れた空の下、旅の始めにみんなでいい表情をして集合写真を撮ったこの場所に、再び旅の終わりに舞い戻ってきたのだ。
とんでもなく中身の濃い丸二日を過ごしたからなのか、そうやって集合写真を撮ったのが、なんだか異様に昔のことのように感じられた。

前日の写真を参考に並び順とポーズをみんなに教え、その通りに立たせてから、僕は三脚を構えて集合写真を撮る準備に入った。
ところが、いざピントを合わせようとすると、回りが暗すぎて全然ピントが合わないのだ。
とりあえず撮ってはみたものの、

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いくらなんでも、こんなピンボケすぎる写真はナシだろう。
何回も何回もピント調整を繰り返していたが、みんな焦ってしょうがない。

4人「早く、早ーく!!!」
たい「だーいじょうぶだって、あと15分もあるんだから」

さらにピント調整にじっくり時間をかけ、セルフタイマーをセット。
ようやく、納得のいく1枚が撮れた。
心の底からホッとしたのか、全員から漏れたため息は、そこら中に聞こえ渡るかのようだった。


結局、新幹線の改札口に着いたのは21時10分。
大阪兄弟が駅弁を買って新幹線に乗り込み、席についてリクライニングを倒してふーっと一息ついたらちょうど発車するぐらいの時間がギリギリ残っているといったところか。
ぶっつけ本番で"集合写真を撮る"というイベントを挿んだ割には、ものすごくドンピシャなタイミングであった。

そんな彼ら2人と握手を交わし、いよいよ見送りである。
また今度は夏に会おうとか、ゆっくり飲んだりクラブに行ったりしようなどという約束を交わした後、

「覚えてろよ!!」

大阪兄弟は口を揃えてこう言い残すと、小走りに新幹線のホームへと向かっていった。


こうして、我々5人のこの本当に無茶苦茶な2日間は幕を閉じた───。

見送りをした後で東京組の3人で乾杯したときのビールの味を、僕は今でも忘れられない。
またこうやって、よくも悪くもずっと記憶に残り続けるような旅を、今度は誰とどのようにすることになるんだろうか。それが、今から楽しみで仕方がない。


おしまい。

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東京23区くじ引きツアー【12】

今回のキーワード
 とんぼ-がえり ―がへり 【〈蜻蛉〉返り】
  (名)スル
  ある場所へ行き、すぐ戻ってくること。
  「柴又に観光に行って、たったの20分で―する」


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江戸川河川敷で、くじの神様に『世田谷区』行きを告げられてしまった我々。
夕暮れの中、このあまりにもひどすぎる現実と、現在地から『世田谷区』までのとんでもない遠さに途方に暮れるのだった。

だが、そう凹んでばかりはいられない。
引いた以上は、そこに行く。ああだこうだと悩んでも、我々にはそのルールに従うしか道はないのであった。
となれば、行き先が決まらないとどうしようもない。まずは、観光名所の事前リサーチ結果を見て、行き先を選ぶことにした。

閑静な住宅街というイメージが強い『世田谷区』だが、観光名所もそれなりに存在することは存在する。
駒沢オリンピック公園』『世田谷代官屋敷』『自由ケ丘』『長谷川町子美術館』『砧公園』『馬事公苑』『等々力渓谷』など、とりたてて全国的にものすごく有名というわけでもないが、まぁそれなりに内容が充実している場所が揃っているのだ。

高倉「世田谷っつったら、どこだ? やっぱり『等々力渓谷』か?」
たい「まぁ、ふつうに考えたらそうでしょうねぇ…」
吉田「他はどこがあんの?」
たい「『駒沢オリンピック公園』とか、『長谷川町子美術館』とか」
吉田「…微妙だなぁ……」

上に挙げた観光地の中で最も見応えがあるのは、ほぼ間違いなく『等々力渓谷』だ。しかし、この『等々力渓谷』、地図を見る限りでは恐ろしく交通の便が悪い。どれぐらい悪いのか調べてみると、実は横浜に行くのと所要時間がほとんど変わらないことが判明したのだった。
それでも長い移動時間を耐えて実力のある『等々力渓谷』に行くか、その他のもうちょっと近い場所でお茶を濁すか。我々は、しばらく頭を抱えて悩んだ。

と、吉田ナゴヤ氏が、突如吹っ切れたようにすっくと立ち上がった。

吉田「よし、等々力渓谷に行こう!」
高倉「おおおおおっ! あんな遠くに! 男だ! あんた男だ!」

なんと、長い距離の移動をあれほど嫌っていた吉田氏が、わざわざ自ら「いちばん遠いところに行こう」と言い出したのである。これを大英断と言わずして何と言うのだろうか。
そんなわけで、吉田氏の"鶴の一声"で、行き先は『等々力渓谷』に決定したのだった。

地図で改めてその場所を確認すると、等々力渓谷のちょっとばかり南に多摩川が流れていることに気づく高倉仮面氏。

高倉「江戸川、荒川、中川と見て、神奈川まで足を伸ばせば多摩川が見れるよ。
   そうすりゃグランドスラムだ、良かったね」
次男「何のグランドスラムだ!」
長男「川なんて、もう見たくないですよ!」

そういえばこのツアー、川とか海とか噴水だとか、いわゆる"水辺"に行くことが多いような気がする。これから向かう場所も実は川が流れているんだが、許せ、次男くん。


行き先の決まった我々は、先ほどあっけなく"制覇"した帝釈天参道を逆戻りして、少し早足で柴又駅へ向かった。
ふと見上げると、橙色に染まり始める空。さっき河川敷にいたときよりも、だいぶ陽が傾いてきているのがわかる。

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「日没までに、着けるのか?」
こんな不安が5人の間をよぎり始める。我々はこれから『大移動』の他にもうひとつ、『日没』という強大な敵を相手にしなければならなくなっていたのだ。

柴又駅で電車を待っている間、長い移動に備えてトイレに行く面々。
僕は行く必要がなかったのでホームでみんなの荷物番をしていたが、なぜか一向に戻ってくる気配がない。おかしいなぁと思っていると、突如踏切の音が鳴り始めた。我々が乗る電車が来てしまったのだ。
ようやくいちばん最初に戻ってきた長男くんに、彼らの様子を聞いた。

長男「けっこう並んでるんですけど、高倉さんとか『どうせ反対方面の電車だろ』ってのんびりしてましたよ」
たい「バカっ! こっちの電車が来てんだよっ! これ逃したらこの駅20分電車来ないんだぞ!」
長男「えぇ! それはやばい! 僕ちょっと呼んできますわ!」

大慌てでみんなを呼びに行く長男くん。
彼に連れられてようやく残りの面子がトイレから出てきたとき、ちょうど電車がホームにすべり込んできた。

たい「乗るぞ! 早く!」
高倉「いや、オレまだ4分の1ぐらい残尿感が…」
4人「いいから早く!」

荷物を持ち、バタバタと電車に駆け込むと、背後で閉まるドア。間一髪であった。
いくらなんでも、何もこんなところまでどたばたしなくったっていいんじゃないかと思うのだが、それはこの5人だからなんだろうかという気もする。


柴又の隣の駅で、早くも高倉仮面氏が「ね、移動時間長いでしょ?あんなの引くからだよ」などと大阪兄弟に文句をたれる。
柴又から『等々力渓谷』へのルートは、京成線を乗り継いで『押上駅』まで向かい、そこから都営浅草線で『中延駅』へ移動し、さらに乗り継いだ東急大井町線の『等々力駅』で下車というコースを辿る。乗り換え3回、所要時間1時間10分という、都内を移動するにしてはかなりの大移動だ。

今回のツアーを回るにあたり、僕はこの珍道中の記録を克明に残すべく、四六時中デジタルカメラを構えてはバシバシ写真を撮りまくっていた。気がつけば2日トータルで300枚近くもの写真が残っているのだが、デジカメというのは都合のいいもので、移動中の我々の愚痴だらけで苦痛に満ちあふれた姿は1枚たりとも残っていないのである。最初からスライドショーで見返していると、テレビ番組で「ワープ!」とか言いながらジャンプして着地するとそこはもう目的地だった、という感覚に近い。
だから、このときの移動ではみんな疲れてかなりぐったりで口数も少なかったことと、口を開けば「遠いねぇ…」という台詞ばかりが出てきたという悲惨な事実を語り継ぐべく、ここに文字としてしっかりと記しておくことにする。


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時刻は18時15分。
我々は、等々力駅改札の入口から徒歩1分、『等々力渓谷』の入口に立っていた。
それにしても、本当にはるばるここまでやってくるとは考えてもみなかった。ちょっと自分を誉めてやりたいとすら思うぐらいの心境である。

赤い欄干の『ゴルフ橋』の脇の階段を下りると、先ほどまでいた都会の街並みから、雰囲気が突如一変する。

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この『等々力渓谷』。
都内23区の住宅地の中に唯一残された"渓谷"であり、一歩足を踏み入れればそこは東京23区内であることを忘れるぐらいに鬱蒼とした森の中である。『等々力』という名前の由来は「奥の方にある『不動の滝』の音が轟き渡った」ところから来ているそうだ。

名前はわからないが、遊歩道の脇にはこんな花も咲いている。

23kuji71

長男「これはいいですね!」
吉田「これ、恐らく夏なら蛍が飛んでるぞ」
全員「おお、それは美しい」

実際に蛍が飛んでいるとは思えないんだが、飛んでいても全く違和感のない光景だった。ほとんど人気のない静かな遊歩道を、我々はゆっくりと奥へ進んでいった。

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しばらくすると、辺りがうっすらと暗くなりだし、街灯に明かりが点り始める。
あと30分遅く到着していたら、間違いなく真っ暗な中を歩かなければいけなかったはずだ。このツアー、つくづく綱渡りのような観光である。

23kuji75

ほどなくして『等々力稲荷堂』が見えてきた。ほんの少し、水音のようなものも聞こえてくる。渓谷の名前の由来にもなった『不動の滝』の音が轟いているらしい。
『滝』のすぐそばまで行くと、満を持したかのように高倉仮面氏が口を開いた。

高倉「東京の自然の力を全て結集したのが、

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   …この、打たせ湯のような滝だよ」

大阪兄弟「…しょぼっ!!!」

「渓谷中に響き渡る滝の音」にしては、じょろじょろびしゃびしゃといった感じで力無い音しかしないのだ。しかも、よく見ると管から水が流れている。これでは本当に"打たせ湯"だ。
滝が流れ落ちるところを見ると、そこには足場がある。時々、修行僧が滝に打たれ邪念を取り去って修行することもあるそうだが…。

次男「やだなー、オレこんなとこで修行したくないよー」
たい「スーパー銭湯の打たせ湯の方が水量あるんじゃない?」

ここぞとばかりにさんざん『不動の滝』に文句をたれる5人。
数年経ったら水が出なくなりました、なんてことがないように祈っておくことにしよう。

そして、やるべきこともしっかり済ませる。すっかりと暗くなってしまった稲荷堂の前で、集合写真をパチリ。
そして、『儀式』である。


全員「これでー、世田谷区はー、制ー覇ー!!


さて、世田谷観光も終わったこのあたりで、そろそろこのツアーの『タイムリミット』について触れておこう。
大阪兄弟は1泊2日の予定で東京に遊びに来ており、2日目のこの日は最終の新幹線に間に合うように帰るとのことだった。つまり、新大阪行きの最終の新幹線発車時刻、21時18分がこのツアーの『タイムリミット』なのである。
このときの時刻は、18時45分。つまり、我々に残された時間はあと約2時間半ということになる。

みなさんだったら、この『2時間半』という時間、どのように遣われるだろうか。
もちろん、2択になるだろう。
ここで観光を終えてタイムリミットまでゆっくり食事をするか、
それとも、もう1回くじを引き、タイムリミットまで余すところなく観光するか、だ。

我々5人の場合は、ここで真っ二つに意見が割れた。
前者が吉田ナゴヤ氏と大阪兄弟、後者が高倉仮面氏と僕である。
あと2時間半あれば、せめて1ヶ所ぐらいは行けるだろう。そう思い、僕はかばんの中から茶封筒を取り出し、次にくじを引く順番である長男くんに突きつけた。
すると、長男くんより先に、吉田ナゴヤ氏が取り乱し始めるではないか。

吉田「お、おいっ!何で、くじを引かなきゃならんのだ! ここで終わりだろ!等々力渓谷で終わりだろ!」
高倉「気付いていたよ。あなたはこの等々力渓谷で観光を終わらせようとしてたんだろ? でも、あの江戸川で、たいさんは何て言ってた?」
たい「僕は『横浜に行くか、くじを2回引くか』と言いました」
吉田「おい、もう時間はないんだよ!どうするんだよ、ここで『練馬区』なんて引いたら!『練馬大根の碑』なんか見に行ったって、どうせ真っ暗で何も見えねぇぞ!」
たい「でも、くじはあと1回ありますからねぇ…」

このやりとりを聞き、錯乱し始める長男くん。

長男「イヤだ! イヤだぁー! イヤだあああぁぁぁぁぁぁ!」

と、茶封筒から逃げ回るばかりで、一向にくじを引こうとしない。
そんな逃げ腰の長男くんに業を煮やした高倉仮面氏が、吼えた。

高倉「君らが引こうとしないんなら、オレが引く!」

と言うやいなや、茶封筒の中に手を突っ込み、くじをまさぐり始める高倉仮面氏。
「いいか? 引くぞ?」という彼の表情には、不敵な笑みが浮かぶ。

吉田「お、おい! ちょっと待て! 引くな! やめろ!」
次男「ダーメだって! 引いちゃダメだって!!!」
長男「イヤだぁぁー! イヤだあああぁぁぁぁぁぁー!」

もはやこの3人、半狂乱状態である。
見るに見かねた高倉仮面氏、何が何でもくじを引くぞとばかりに、ついに実力行使に打って出た。

高倉「よし、こうなったら連帯責任だ。全員でくじを引いて、封筒の中に残った1枚の区に行こう!」

そう言い放つと、嬉々としてくじを引き、茶封筒を僕に手渡す高倉仮面氏。
かくして、自分たちの行ける場所を自分たちの手でひとつずつ潰していくという、恐怖のくじ引きが始まったのである。
高倉仮面→たい→吉田ナゴヤ→次男→長男 という順番で、1人1枚ずつくじを引いていったのだが…。
その経過を、引いてしまった区を灰色に塗りつぶす形で、ご覧いただくことにしよう。


まず、最初の高倉仮面氏、たい、吉田ナゴヤ氏の3人であるが…

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いきなり、現在地から近い『中野区』『目黒区』『渋谷区』が、消えた。
それと同時に、みんなの顔から少しずつ、余裕が消え始めた。


次に、次男くんと長男くんである。

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この時点で、東京駅のある『千代田区』に隣接する『中央区』『文京区』が、消えた。
なんと、5人が1回りくじを引き終わった時点で、早くも"当たりくじ"の大半を潰してしまった形になるのだ。
この辺りから、みんなの表情が恐怖に引きつり始めた。

そして、この恐怖のくじ引きは、2周目に突入していく───。


高倉仮面氏とたいの2人がくじ引きを終えた時点で…

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なんと、新幹線品川駅のある『港区』、その隣の『品川区』が、消えた。
つまり、現在地から移動が比較的楽な区は、まだ引く枚数を残していながらも、早くも全滅してしまったのだ。
次にくじを引く順番の吉田ナゴヤ氏が、相当焦り始める。

吉田「ちょっと待て、、今、どこが残ってるんだ!??」

慌てて封筒の中を覗き、残りを確認すると、『江東区』『墨田区』『練馬区』『板橋区』『豊島区』という5枚が残っている。
この中では、強いて言えば『池袋』という大都市のある『豊島区』が"当たりくじ"であるが、それ以外の4つの区は、事前リサーチを見る限りロクな観光地がないような場所なのである。おまけに、この日の朝に"ババ"認定した『練馬区』と『板橋区』が両方残っているではないか。

つまり、"はずれくじ"の確率は、この時点で、なんと80%───。
我々は、かつてない緊張感に襲われた。


しかし、ここから少し運気が盛り返したのか、今までの不運がウソのような引きっぷりを見せる。
吉田氏が『江東区』を、次男くんが『板橋区』を引いてきた。

全員「よしよしよし、まだいけるまだいける!!!」


さらに、次の長男くんが『墨田区』を引いてくると、

全員「よーしよしよし!!!! よくやったよくやった!!!!!」

全部弾き終わったわけでもないのに、すでにお祭り騒ぎである。
緊張と不安とが入り交じり、みんなものすごいテンションになっていた。


そして、気がつけば、封筒の中にはあと2枚のくじだけが残されるのみとなった。

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残るは、『豊島区』と『練馬区』である。

『豊島区』が最後まで残れば、間違いなく観光名所は池袋の『サンシャイン60』だ。
しかも、池袋ならば食事をするにも困らない上、東京駅にもほどほど近い。
『練馬区』が最後まで残ってしまうと、間違いなく観光名所は『練馬大根の碑』である。
しかも、回りは練馬の住宅街で、食事をするところもなく、東京駅からはだいぶ遠い。

我々がどちらに行けるかを決定するのは、次にくじを引く順番である、高倉仮面氏であった。

みんな、一心不乱に祈る。
頼む、何がなんでも『豊島区』を残してくれ。
真っ暗な中、『練馬大根の碑』を見に行くのは勘弁してくれ、と───。


その場の誰よりもいちばん緊張していたであろう高倉仮面氏、
右手を茶封筒に入れてしばらくごそごそやっていたが、いよいよ腹を据えたようである。

「これだッ!!!」

と叫び、勢いよく、1枚を抜き取った。


天国か、地獄か。
いよいよ、審判が下される瞬間がやってきた───。


我々を待ち受けるのは、『サンシャイン60』か、それとも『練馬大根の碑』か?
大阪兄弟は、無事に大阪に帰れるのか?
運は、天のみぞ知る。


次回、完結。

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東京23区くじ引きツアー【11】

今回の『テーマソング』
 つれて逃げてよ~
 ついておいでよ~
 夕ぐれの雨が降る 矢切の~渡し~
 親のこころに そむいてまでも~
 恋に生きたい 二人です~~     ───細川たかし『矢切の渡し』


東海道新幹線には、皆さんご存じの通り『新横浜』という駅がある。
ちょっと横浜からは離れているけれども、横浜みなとみらい地区や中華街へ行くには決してアクセスの悪い場所ではない。
だから、大阪兄弟が「横浜にも行ってみたい」と言い出したとき、横浜に近い区のくじを引いたらそのまんまみなとみらいや中華街に行き、おいしいものをおみやげに買ってもらい、中華料理をみんなで食べてから新横浜でお見送りというのも悪くないなぁと思っていたりしたのだ。
だが、それは、あくまでも「横浜に近い区のくじを引いたら」の話であった。


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…で、こんなの引いちゃった。

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…で、ピンクの矢印の方向に移動することになっちゃった。


そんな矢印の先っちょにある『葛飾区』。
僕は1回も映画を観たことがないんだけれども、「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又」というセリフに表れるように、映画『男はつらいよ』の寅さんの功績は『葛飾区』、いや『柴又』にとって非常に大きいようだ。浅草の仲見世のあたりでも軽くそのあたりに触れたが、全国的に知名度が上がったのは映画『男はつらいよ』シリーズのヒットからだそうで、観光客が押し寄せるようになったのは比較的最近のことのようだ。

ところが、この柴又がものすごく交通の便が悪い。『柴又帝釈天』の最寄りである柴又駅は、東京23区内なのに20分に1本しか電車が来ないという、いわゆる"陸の孤島"なのだ。よりによって、現在地の新宿からは約1時間もかかってしまう。

そこで、考えた。
どこか、柴又ほど遠くなく、さくっと行ける『葛飾区』の名所はないものか。

自分の頭の中のポンコツな検索エンジンに『葛飾区』と入力したら、しばらく時間が経ってようやく『葛飾区亀有公園前派出所』というキーワードが引っかかってきた。正式には名前は違うが、『こち亀』のモデルになった派出所があったのを思い出したのだ。地図で調べてみると、JR亀有駅前からすぐのところにあるではないか。
これは大移動しなくて済むチャンス!と思い、さりげなく提案してみることにした。

たい「JR亀有駅のすぐ近くに交番あるんで、そこで写真撮って『葛飾区』終わりにしませんかね?」

だが、これを言った相手が悪かった。
このツアーの"歩くルールブック"、高倉仮面氏である。

高倉「ダメ! 派出所は観光名所じゃないから!」
たい「いやちょっと、でも柴又は遠すぎでしょ…」
高倉「オレ達は『観光』してるんだから、観光名所行かないと意味がないでしょ!」

この男、くじ引きの瞬間はものすごくダウンしているんだが、『葛飾区』行きが決まったとなったら恐ろしいまでに切り替えが早い。もう何が何でも『柴又』に我々を連れて行くつもりらしいのだ。彼の固い意志の前には、僕の付け焼き刃の提案などはまさに"焼け石に水"状態であった。


仕方なく柴又行きの覚悟を決め、都庁方面から地下道を通りJR新宿駅に向かっている途中、ドラッグストアの前を通過する一行。
昼ごはんの食べ過ぎで苦しそうだった長男くんを気遣い、ふと足を止めたはずだったが…

高倉「長男くん、胃薬はいいの?」
たい「そうだ、胃もたれ大丈夫?」
長男「今の(クジで『葛飾区』を引いた)でどばっと胃液出てきましたわ…」
高倉「じゃあ、寄らなくてもいいか」
たい「今から柴又まで行くのに、ドリンク剤飲まなくていいんすか?」
高倉「あ、それは必要だな…」

なんと、ここで急遽目的が「ドリンク剤を飲んで栄養補給」にすり替わってしまった。
前日の『杉並区』に引き続き、またもやドラッグストアのレジに列をなす面々。このツアーで2本目のドリンク剤購入であるが、2回目にしてすでに「こんな疲れるツアーなんだから、ドリンク剤飲まないとやってられないのは当たり前」とみんなが思っているのは、正常なのかどうなのか。ともかく、フタを開けるやいなや、買ったばかりのドリンク剤をぐいっと一気に飲み干し、ちょっとだけ気合いを入れ直してから新宿駅へと向かったのであった。


しかし、これだけ過酷なツアーも2日目となると、ドリンク剤1本飲んだ程度では癒しの効果なんてものは全くない。飲んだ瞬間に「ファイトー!」「いっぱぁーつ!」などと元気が湧いてくればいいのだが、そんなのはCMだけの世界らしいということがよくわかる。少なくとも僕は、新宿から柴又の方へと向かう山手線の中だけで、確実にドリンク剤1本分以上の体力を消耗していた。まるで、燃料計の針が急速に『E』に近づいていくのがわかるようだった。

どうやら、そこまで疲れていたのは僕だけではなかったようである。
JR日暮里駅で京成線に乗り換えて柴又方面行きの電車に乗り込む頃には、5人全員の口数が極端に少なくなっていた。吉田ナゴヤ氏などは、むっつりと不機嫌そうな顔をして窓の外の景色を眺めている。
そこに、いつものように高倉仮面氏が揶揄しにかかったのだが…

高倉「怒ってるのかい? 怒ってるとしたら、それがこの企画の醍醐味と言っていいんじゃないか?」

だが、高倉仮面氏の期待とは裏腹に、吉田ナゴヤ氏の反応は薄い。本当に機嫌を損ねたのか、高倉仮面氏の発言に対して二言三言ぼやいた後、黙りこくってしまった。そのやりとりを見ていた大阪兄弟の顔にも、焦燥の色が浮かび上がってくる。ふと見上げた路線図には、隅っこの方に申し訳程度に小さな字で『横浜』と書いてある。

「だいたい、横浜に行こうとしていたのに、何でわざわざ柴又まで行かなきゃいけないんだ?」

堤防が、"疲れ"という大きな波によって決壊したかのように、抑えていたその気持ちがどどっと溢れ出てきているのがわかった。
場の空気はもはやカラカラ、一触即発の雰囲気が一行の間に漂う。
それとは裏腹に、我々を乗せた電車は荒川、中川を越え、横浜とは見事なまでに方角違いの柴又方面へ刻一刻と近づいていくのであった。


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…着いた。
新宿から約1時間、「はるばる来たぜ柴又」である。
余談だが、渥美清と千昌夫の顔がダブって思い出されるのは僕だけだろうか。他にこの気持ちがわかるという人がいたら、ぜひとも教えてほしい。

それにしても、観光地というのは人を現金にさせる効果を持っているようである。先ほどまであれほどピリピリしていた5人だが、柴又駅前にある寅さんの銅像と、その前で入れ替わり立ち替わり写真を撮っている観光客の姿を見るや否や、一気に観光モードに切り替わったのだった。
そしてそのまま、駅前から続く観光客の流れに乗って、帝釈天参道へと進んでいく一行であった。

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柴又に初めて来たという大阪兄弟の2人。
そんな彼らに、この帝釈天参道の感想を訊いてみた。

長男「いやぁー、僕、こんな雰囲気、ホンっト大好きですわあ!」
次男「いやぁー、柴又って街はホンっトに無理してますね!」

寅さん好きというのも手伝ってか、左右に建ち並ぶみやげもの屋あちこちを覗いては「おいしそうですねぇ!」という言葉を繰り返す長男くん。そんな長男くんを、まるで「観光地に来た途端脳天気だなぁコイツは」という、ある種ドライな目で見ている次男くん。同じ場所でここまで対照的な反応をするのかというぐらい、見事なまでの正反対っぷりであった。

初期の『男はつらいよ』の舞台となった『とらや』の側を通過すると、道の左側にちょっとした人だかりができていた。何かと思って近づくと、なんだか軽快で小気味のいいリズムが聞こえてくる。

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職人さんが2人、包丁とまな板を使い、飴を切りながらタカトンタカトンとリズムを刻んでいるのが見えた。『松屋の飴総本店』の『飴切り音頭』だ。
足を止め、しばらくその手さばきに見とれる一行。

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どれだけどういう修行したらここまでになるのかなぁ、やっぱりプロは衆人環境の中でもプレッシャーには負けずに失敗しないんだろうなぁ…などと考えながら見ていたら、最後に包丁を上に放り投げてキャッチするところで、右のおっちゃんが包丁を落とした。苦笑いするおっちゃん。プロといえども、やはり人の子だったようだ。なんだかちょっと微笑ましい光景であった。


そこからちょっと歩くと、もう『柴又帝釈天』である。

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それにしても、お参りしている人のこれまた少ないこと。
午前中に行った浅草寺の人混みがまるで嘘のようである。同じ観光地でもここまで実力差があるのかと思うと、少し寂しく思ったりもした。もっとも、そんな我々も、本堂の前にいながら「浅草寺でお参りしたから今日はもういいよね」などと言い放ち、結局お参りしなかったんだが。

お参りはしなくても、この5人がいくら不信心な面子だといっても、やることはやらなくてはいけない。
帝釈天の本堂をバックに、集合写真をパチリ。
そして、『儀式』だ。


全員「これでー、葛飾区はー、制ー覇ー!!


ふと時計を見ると、針は夕方の4時20分を指していた。
ちなみに、柴又駅に到着したのがちょうど夕方の4時のことである。

そう、ここまでわざわざ1時間以上もかけてはるばる移動してきたというのに、なんとわずか20分で柴又の観光終了、ひいては「葛飾区を制覇」してしまったのだ。一応他にも『寅さん記念館』や『柴又七福神』なんかがあるんだが、疲れていた我々の食指はぴくりとも動かなかった。
あくまでも個人的な感想なのだが、柴又という街は『寅さん』に頼りすぎている気がするのだ。次男くんが「無理してますね」と言った気持ちがとてもよくわかる。浅草ほどとは言わないが、映画『男はつらいよ』よりもずっとずっと歴史の古い街なのだ、せめて『男はつらいよ』以外のところでもうちょっとがんばってほしいという気がしてならない。


さて、我々は、帝釈天の裏側を抜けて歩くこと約2分、江戸川の川辺へとやってきた。
土手をゆっくり登ると、眼前には雲一つない青い空と、左右に果てしなく延びる江戸川の河川敷が広がる。有名な『矢切の渡し』もすぐそこに見える。

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そういえば、「雲一つない青い空と、左右に果てしなく延びる河川敷」という光景を、前日にくじで引き当てた『北区』で目にしていたのを思い出した。
荒川と江戸川。川は違えど、同じ河川敷で同じ光景である。
それなのに、前日あれだけいい気分だったのとは対照的に、なぜ今こんなにも黄昏れているのだろうか。

我々は土手に座り、風に吹かれてぼーっと遠くを見ながら、こんな会話を繰り広げた。

高倉「何で横浜に行こうっちゅーてるのに、柴又の土手で江戸川見てるんだろ?」
吉田「川の向こう、横浜どころか千葉だぞ!??」
次男「路線図でもあんな遠くに描いてあったしねぇ、横浜…」
たい「ヘタしたら、横浜まで移動する時間で、近いとこだったらくじ2回引けるんじゃないの?」
長男「うーん…」

ふと、横浜まで本当に行ったらどれぐらいかかるのか『乗換案内』を使って調べてみると、恐ろしい結果が出てきた。

たい「横浜まで、ここから1時間10分かかるらしいっすよ。柴又駅5時に出たら、横浜6時10分」
吉田「かかりすぎだろ!」
高倉「…ホント遠いな……」

移動時間が1時間10分というこの厳しい現実を目の当たりにして、みんなの「横浜に行こう」という気持ちが、しぼんでいく風船のようにだんだんと萎えていくのがわかった。

たい「そもそも、長男くんと次男くんはなんで横浜行きたいわけ?」
次男「いやー、おいしいものとか買って帰ろうかなーって…」
たい「おいしいものだったら、うまいこと近くの区引いたら、そこで何かしらん買えない?」
次男「まぁ…そりゃーね…そうだけど…」
たい「わかった。じゃあこうしよう。あれだけ遠くても横浜行くんだったら行こう。行かないんだったら、くじ2回引く。これでどうよ?」
次男「うーん……」
高倉「ここまで横浜から離れちゃったら、もうどこ行ったって一緒かもな…」
全員「う───ん………」


迷う一行。
横浜に行くか、くじを引いて従うか。


さんざん考え抜いた挙げ句、
やはりというかなんというか、結局、くじを引く事にした。
いくらなんだって、そろそろちょっとぐらいはくじ運がよくなってもいいだろうと。
今までがあれだけひどかったんだから、そろそろ移動の楽な区を引いてもいいだろうと。
そういう期待を一身に込めて、くじを引く事を決意したのである。

だが、我々は大事なことを忘れていた。
次にくじを引くのが、あの"悪魔の右手"を持つ、次男くんであることを───。


次男くんが茶封筒から取り出したくじの文字をみんなで確認すると、こんな文字が書いてある。



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高倉「せ……世田谷!!! 世田谷~~~!!!!!」

ショックのあまりか、すっとんきょうな声を上げながら、高倉仮面氏がゴロゴロと江戸川の土手を転がり落ちていった。


そりゃ確かに「どこ行ったって一緒」という話はした。
だからって、

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…何も、いちばん遠いところを引いてくることはないんじゃないだろうか。


このとき、ツアー終了まで我々に残された時間は約4時間半。
残り時間の少なさを告げるように、ゆっくりと陽は西へと傾いていった。


つづく。

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東京23区くじ引きツアー【10】

前回までのあらすじ
 浅草なんて、とどのつまりは人混みさ。


人間、やっぱり生きている以上はお腹が空くもので、
お腹が空く以上はごはんが食べたいと思うもので、
ごはんが食べたいと思う以上はおいしいところで食べたいものである。

浅草というのは、街が古いだけあって、食事処の老舗というのもたくさんあるようだ。
前回ご紹介したすき焼き『浅草今半』、天ぷら『大黒屋』、柳川鍋、洋食『リスボン』に元祖デンキブランで有名な『神谷バー』、「うますぎて申し訳ないス!」のキャッチコピーで有名な『ヨシカミ』などなど、挙げるととにかくキリがない。そして、そのどれもが間違いなくおいしそうな店なのである。

しかし、我々は確実に、ゴールデンウイークど真ん中の浅草の混み具合をなめていた。
上に書いたどの店も、ディズニーランドの人気アトラクションばりに混んでいて数十分待ちという状態だ。
いくら浅草でうまいものが食べたいといっても、昼食のために数十分も待つのは耐えられない。もう『台東区』も十分観光したし、そろそろ他の区に移動してうまいものでも…と思ってくじを引いた結果、

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いわゆる"フツーの大都会"、『新宿区』に行くことになった。
東京らしいといえば東京らしく、観光名所もほどほどにある。食事処も、浅草ほど歴史のある名店はあまりないが、さすがに大都会なのでおいしい店はいくらでもある。そんなわけで『新宿区』というのは、23区の中では当たりでもはずれでもないなんとも微妙な位置づけの区なのだ。
そんな区だからかどうかは知らないが、神田へ向かう銀座線の中で話し合った結果、選んだ観光名所も当たり障りも何もない『東京都庁』になった。

神田駅のホームで新宿行きの中央線を待っていると、突如高倉仮面氏が思い出したかのようにこんなことを言い出す。

高倉「そうだ、都庁の方に行くんだったら、カレー食おう!」

なんでも、新宿西口のビル街に以前行ったカレー屋がおいしかったんだそうだ。
『新宿西口ビル街のカレー屋』といえば、僕にも一軒心当たりがあった。

たい「それって『夢民(むーみん)』ってとこじゃないですかね? 野村ビルの…」
高倉「いや、確か『もうやん』って名前だったと思うなぁ」
たい「どんなとこでした?」
高倉「辛さが何段階かで選べるんだよ」
たい「それってやっぱり『むーみん』じゃないんすか?」
高倉「だから『もうやん』だっちゅーてるじゃない!」
たい「いや、『むーみん』でしょ?」
高倉「『もうやん』だって!」

『もうやん』というカレー屋(結局、ホントに『夢民』と『もうやん』は別物だった)をひたすら薦める高倉仮面氏。しかし、カレーというのは、おいしいけれども食べるのに体力が必要な食べ物である。疲れ切っている一行は、全員(高倉仮面氏を除く)あまりカレーを食べたくはないという顔をしていた。「今カレーを食ったら、確実に胃もたれする」と顔で語っていたかのようである。

このままノーアイデアだと、確実にカレー食って胃もたれコースになってしまう。「その流れだけは何が何でも阻止しよう」と僕はそっと心に決め、どこかさっぱりとしておいしいものが食べられるところはないのかを疲れた頭を振り絞って考えた。
そこで僕の脳裏に浮かんだのは、去年の夏のとある暑い日に食べた『ざるうどんとビール』である。確かそのときは、うまいうまいと言いながら冷たいうどんとビールを交互にぐいぐいと胃袋に流し込んだのだった。
ちょうどこの日は五月晴れで、気温もちょっと高めであった。なんというか、自分の中で『冷たいうどんとビール熱』が急速に高まっていくのがわかった。
たまらず、こう切り出すことにする。

たい「讃岐うどんとかどうっすかね? 『東京麺通団』」
次男「えー、東京まで来て讃岐うどん食うのー?」

いきなりダウン気味な反応をする次男くん。
確かに、関西人としては当たり前の反応かもしれない。そんな彼は、以前東京に出張に来たとき、「東京に来たからには東京のうまいもんが食いたい!」と思っていたら、会社の先輩に連れて行かれたのが京風屋台ラーメン『よってこや』だったという苦い経験の持ち主である。
しまった、讃岐うどんではカレーの流れをひっくり返すのに弱いか?とめげかけたそのとき。
しばらく考え込んでいた吉田ナゴヤ氏の心の天秤が、カターンと『うどん』の側に傾いた音が聞こえた。

吉田「次男くん、うどんと、………カレーと、どっちがいい?」
次男「うーん… うどん…かなぁ……」

あっという間に形勢逆転である。
一応高倉仮面氏の「カレーが食べたい」という意志も尊重しつつ『うどん』対『カレー』でじゃんけんをしたのだが、これも結果は『うどん』の勝ち。こうして、『うどん派』が完全勝利を収め、我々は胃もたれの危機から逃れられたのだった。


新宿に到着した我々は、駅から徒歩5分、讃岐うどんの名店『東京麺通団』へと向かった。
浅草からじらされること約40分、ようやく待ちに待った食事タイムである。

この店は、基本的にセルフサービスになっている。まず最初にうどんを注文し、出来上がったうどんを受け取ったら奥へ向かい、天ぷらやトッピング、つまみなどを自分で好きなだけ取る。お酒が飲みたい人はレジで注文すればOKだ。ちなみにこの店、『はなまるうどん』のようなところとは違い、日本酒や焼酎、それらに合う酒のつまみやおでんなんかが充実している。入口に「呑み助大歓迎!」と書いてあるほどで、お酒好きの僕にとってはうれしいお店だったりする。

で、天ぷらやらなんやらを、ホントに好きなだけ取っている男が一人いた。
長男くんである。
彼のお盆の上を見ると、うどんの大におにぎり2つと山盛りの天ぷらが乗っている。一目見ただけでものすごい食事量というのが丸わかりだ。

高倉「おおっ、長男くんは随分食べるんだねぇ」
長男「僕、朝は量を食べるんですわ。朝とか昼にいっぱい食べたら夜いらないぐらいなんですよ」

そんなに食ったら胃もたれしそうだなぁと思いながら会計を済ませ、全員で「いただきまーす!」とうどんにむさぼりつく。
僕は、フラッシュバックした記憶と同じように、冷やかけのうどんとビールを流し込む。最初は文句を言っていた次男くんも、なんだかんだでうまいうまいといいながら食べていた。

そうやってみんながおいしそうにうどんをずるずると啜り込んでいる中、一人だけうどんを食べるのに大苦戦している男がいた。
高倉仮面氏である。
彼は釜揚げうどんを注文していたんだが、麺を持ち上げると箸の間からつるっと麺が落ちてしまってなかなかつかめていない。どうやら彼は箸の持ち方にくせがあるらしく、ちゃんと麺を箸でつかまえきれていないようだった。「麺が長すぎる」だのさんざん文句をたれた挙げ句、

高倉「あー、もう釜揚げうどんなんか二度と食わねぇ!」

などと言い出す始末である。
もったいない発言だ。釜揚げうどん、すごくおいしいのに…。
彼には、ぜひとも箸の正しい持ち方を会得してもらい、いつの日か釜揚げうどんの本当のうまさを味わっていただきたいものである。

食べ終わって店を出ると、長男くんがやたら苦しそうな顔をしている。

長男「いやー、ちょっとさすがに食べ過ぎましたかねー…」

どうやら、食べ過ぎて早くも胃もたれの症状が出ている。セルフサービスなんだから、選ぶ段階で気づけといったところだ。まさに自業自得なので、歩きまくってがんばって消化してもらうことにしよう。


さて、このままでは『新宿区』編が我々の食事シーンだけで終わってしまう。そんなところばかりお見せしてもしょうがないので、そろそろ観光シーンにでも移ろうかと思う。

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新宿のシンボルといえば、やはり西口の高層ビル街であろうか。
立ち並ぶビルを見上げるようにしながら、我々は都庁方面へと進んでいく。そして、そんなビル群の中のひとつ、『新宿アイランドタワー』のあたりまでやってきた。
ここの地下には『アイランドパティオ』という吹き抜けの円形広場がある。そこはオープンテラスのようになっていて、並べてあるパラソルつきのテーブルと椅子は誰でも使えるのだ。学生のときなんかは、晴れた日に隣のロッテリアで買ったハンバーガーのセットを食べながら、のんびり風に吹かれつつ本なんかを読んだりしたものだった。
そんなアイランドタワーの入口には、『LOVE』という文字をかたどったオブジェがどーんと建っている。

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吉田「アレ見た?『LOVE』ですよ『ラブ』。誰があんなもん作るんだろうねぇ?」
たい「ここの『V』と『E』の間をくぐると恋愛が成就する、っていう都市伝説があるんですよ」
高倉「何!? それは本当か!」
たい「夜中に誰にも見られないで、っていう条件つくらしいんですけどね」
吉田「それは無理ってもんだろ!」

そんな都市伝説の話をしたせいか、本当に『V』と『E』の間をくぐる人も現れ、挙げ句の果てにこのオブジェに寄りかかって被写体となる僕以外の4人。
みんなそれなりにいい顔をして写真に写っているが、いかんせん男4人ではどうしようもないミスマッチ具合である。読者のみなさんが『LOVE』のオブジェと一緒に写真を撮る場合は、くれぐれも男だけで撮らないようにご注意頂きたい。


そこから歩くこと5分。我々は、そびえ立つ都庁のビルの真下に到着した。
僕はもう何回も行っているので、ここの案内はお手の物だ。入口に向かってみんなを先導する。
それとは対照的に、東京人にも関わらず、東京都庁が物珍しそうな高倉仮面氏と吉田ナゴヤ氏。あれだけ浅草だの上野だのと都内の観光名所に詳しいのだが、実は意外なことに都庁の展望台は初めてだという。

たい「入口こっちですよ」
高倉「たいさん、なんでこの辺そんな詳しいんだ!?」
たい「あー、学生んときとかけっこう来てましたからねぇ、こっちの方」
高倉「オレと吉田さんって、実は都庁の展望台行ったことないって知ってた?」
たい「え、そうなんすか? あれだけ東京あちこち行ってるから、てっきり行ってるもんだと…」
高倉「オレらは浅草みたいな観光地とか散歩は得意だけど、デートスポットはまるでダメなんだよ」

そんな僕も、最近デートなんてものはさっぱりしていないので、今流行りのデートスポットというのはまるでダメダメであるが。まぁそんな話は置いておいて、目的地の『東京都庁展望室』に向かうことにしよう。
ここは北展望室と南展望室の2つがある。夜の11時ぐらいまでやっているので、夜景を見るには絶好のポイントでだったりもする。そして、ここの最大のメリットといえば、なんといっても"無料"なこと。晴れた日に新宿にいるときは、ぷらっと寄って景色を眺めてみるのもいいかもしれない。

乗り込んだエレベーターのドアが閉まって1分足らずで、そこはもう地上45階である。
そこから見える雲一つない晴れ渡った空とその下に広がる東京の景色を、我々のくだらない会話を挿みながらご覧頂くことにしよう。

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高倉「すごいな、絵はがきみたいだなコレ」
たい「昼間はもやがかかっちゃってダメなんですよねー。朝方とか空気のきれいなときだと富士山とか見えるかも?」

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たい「次男くん、あの白いのが東京ドーム」
次男「いや、もう東京ドームはいいって…」

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長男「梅田のスカイビルとはまた違った感じでいいですねぇ」
高倉「そういえば、オレ高所恐怖症なんだよね」
たい「いやいやいや、ふつうこんだけの高さから下見たら、誰だってコワイでしょ?」
長男「僕は割と平気なんですよー。高いところで仕事したこともあるんで」
4人「どんな仕事だ!??」

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吉田「あの段々になってるビルは何?」
たい「アレは『東京パークタワー』ですね。東京ガスのビルですわ」
高倉「ホント詳しいよなぁ。ちきしょー、デートしてぇー」
たい「いやいや、それ案内板とかに書いてあるし! あー、オレもデートしてぇー」

所要時間、約15分といったところだろうか。
展望室にはカフェテリアもあって、夜はカクテルなんかも飲めたりするのだが、男5人の我々はそんなところは無視である。あっという間にエレベーターで地上に降りてきてしまった。
ちょっと歩いて都庁の議事堂前の広場に行き、都庁をバックにローアングルから集合写真をパチリとやる。
そして、『儀式』である。


全員「これでー、新宿区はー、制ー覇ー!!


さぁ、ちゃんと観光もしたし、これで新宿区も終わり。
次はどこへ行こう?という話になった。

そういえば、上野にいたときに、こんな会話が交わされていたのを思い出した。

吉田「今日は浅草行ったら、その辺でてきとーに横浜に脱出か?」
次男「横浜行ったら買い物したいっすわー」
長男「そのペースだと、だいたい、横浜着いたら3時ぐらいですかね?」
次男「いい時間だねー」

この会話は、前日の晩に追加された『エクストラルール』、
「横浜に行くのにアクセスのいい区を引いたら、そこで『東京23区くじ引きツアー』は終了とし、横浜へ向かうこと」というものに基づいて交わされたものである。

が、しかしだ。
僕は、実はこの『エクストラルール』というヤツに、正直疑問を持っていた。

横浜なんてところは、行こうと思えばいつだって行ける。
でも、こうやってくじを引いていろんなところを回るってのは、たぶん今回で懲りてもうやらない可能性が高いに違いない。
だから、今この場で『東京23区くじ引きツアー』を中断して横浜に行くよりも、くじを引き続けてこのツアーを終えた方が、大阪兄弟にとって記憶に残り続ける旅になるんじゃないだろうか?
もちろん、いい思い出か悪い思い出かは別として、の話だが。

そう思って、茶封筒を取り出し、長男くんに突きつけた。

たい「…というわけで、くじをもう一本」
吉田「待て待て待て、何でこのタイミングでくじを引かなきゃいかんのだっ!?」

このくじびき観光方式にすっかり疲れ、すでに心は横浜行きに向いていた吉田氏、長男くんのくじ引きを全力で阻止しようとする。
そして、僕に茶封筒を突きつけられ、長男くんは恐れおののいている。
しかし。

長男「イヤだぁー、イヤだぁーっ!」

といいつつ、しっかり紙袋に手を入れて、次のくじを1枚選んでいるではないか。これも悲しい関西人の習性というヤツなのか。

吉田「お前もお前で、何でくじを引くんだっ!?」

すっかりあきれ顔の吉田氏である。


ここで改めて、東京23区の位置関係についてご説明しよう。
黄色が前日に制覇した区、山吹色が今日移動してきた区である。
現在地は『新宿区』だ。

23ku_map3

大阪兄弟と吉田ナゴヤ氏の行きたがっている『横浜』に向かうのにベストな区は、横浜方面に向かって電車が延びている『渋谷区』『目黒区』『港区』『品川区』である。まぁ『世田谷区』を引いても、横浜に近くならないわけではない。
反対に、今いちばん引いてはいけないのは『葛飾区』である。なんといっても横浜から限りなく遠い上に、思いつく観光名所といえば、葛飾区の最北端に位置する『柴又』と『矢切の渡し』しかないのだ。『矢切の渡し』に乗って江戸川を渡ってしまったら、そこはもう千葉なのである。無論、そんな遠いところには、誰も行きたくなかった。

高倉「葛飾区だけは絶対引くなよ…!」
たい「葛飾はやめてくれ… 他はまだマシだから、葛飾区だけは引くな…!」

みんな、とにかく祈る。
頼む、横浜に行くのにアクセスのいい区を引いてくれ。
いや、そこまでは言わない、せめて『葛飾区』でない区を引いてくれ、と───。


しばらくして、長男くんが、くじを選び終わったようだった。
5人の間に緊張が走る。

一人で引いたくじをそっと確認し、「あぁっ…!」と小さな声を漏らしてうずくまる長男くん。
何やらイヤな予感がする。
慌てて長男くんの握りしめた手からくじの紙を奪い取り、そこに書かれている文字を確認し…


絶句した。


そして思わず、次に行くことになってしまった区の"テーマソング"を口ずさむ僕。


たい「矢切~のぉ~、わたぁしぃ~~~!」
高倉・吉田・次男「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」




23kuji60


そう、本当に"引いてはいけない"『葛飾区』を引いてしまったのだ。
都庁の議事堂前の広場で、叫ぶこともできずにただただ呆然とする5人。
そりゃそうだ。今までも、大阪兄弟はことごとく「引くな」と行った区のくじを引き続けてきたが、いくらなんでもまたやっちまうとは思わなかったからだ。

しばらくしてから、高倉仮面氏がけだるそうな声を上げた。 

「…葛飾区、行くぞ!」

我々はもはや憤る気力もなく、まるで屍の行進かと思うぐらいの重々しいオーラをまとい、力ない足どりで新宿駅へと向かうのだった。


つづく。

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