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メトロン星人東京をゆく【4】

前回までのあらすじ
 なんだかよくわからないが、『水準』というヤツにもいろいろあるらしい。
 ときどき騙すヤツもいるから、よい子のみんなは気をつけろ!


渋谷といえば『若者の街』というのがいちばん手っ取り早い気がする。
昔も今も、たぶん認識は同じという人がきっと多いんじゃないだろうか。ハチ公前はもはや言うまでもなく全国区の待ち合わせ場所であるし、駅前のスクランブル交差点はいつもいつも「どこからこんなに人が湧いてきたんだ!?」と思うぐらいに人がごった返している。センター街にはギャルだの鼻ピアス男だのが所狭しとひしめき合い、週末の夜ともなると自分の限界を知らずにはしゃぎすぎた学生なんかがぱたぱたと道端に倒れている。東京にはそれこそ新宿だの池袋だの品川だのと大きい街が多いが、そんな中でも渋谷ほど「雑多」だとか「無秩序」だとかいう言葉が似合う街もないんではないかと思う。

で、我々は、

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こんなくじを引いてしまったので、その渋谷に向かうことになったのである。
ここで、渋谷のどこに行こうかと全員が頭を悩ませていたとき、吉田氏が「そうだ!」と叫んだところに話を戻そう。
彼が浮かべた候補地とは、いったいどこだったのか。話を聞いてみることにした。

吉田「マミドバーガーに行こう!」

いきなり出てきたのが、どうやら食べ物屋の名前らしい。それにしても、『バーガー』という名前がつく割には、なんだか全く聞いたことのない名前だ。
もうその名前から、明らかにこの人はヘンなものを我々に食わせようとしているんだというその意図が汲んで取れた。でも、いくらなんでも、それがどんな店なのか、せめてどんな毛色の店なのかぐらいはある程度教えてもらわないと困る。

高倉「ラーメン二郎系じゃないよね?」
吉田「違う違う」

やたらとハンバーガーがでかいとか、大食いとか、そういう系統ではないらしい。

たい「ゲテモノ系じゃないですよね?」
吉田「…」

なぜ、そこで黙るのか。
僕の頭の中では、『ゲテモノ』と『バーガー』、またその『マミド』という3文字の語感が入り交じり、なんとなく『ミミズバーガー』のようなものを食わされるのではないか、いやいやそれはまだマシな方で、実は虫かなんかが挟まってるんじゃないだろうか…というように、どんどんと悪い方向へと想像が一人歩きし始めた。

しかし、高倉仮面氏の次のこの質問が、我々の方向性を決定づけることとなった。

高倉「それは東京でしか食べられないものかい?」
吉田「イエース!」

そう、そういうことなのだ。
大阪兄弟の2人が楽しみにしている「東京でしか食べられないもの」を食べに行くとなっては、もうこれは行くしかないだろう。いくら、仮にそれがゲテモノだったとしても、だ。
腹をくくった我々は、まずは『マミドバーガー』に行き、観光スポットはその場で何かいい場所を思いついたらそこへ行く、という渋谷エンジョイ計画を練り上げたのだった。


さて、渋谷に向かうルートである。我々は『Z』と書かれたくじを引いたため、半蔵門線に乗っていかなければならないのだが、幸い、国会議事堂の目の前から歩いてちょっとのところに半蔵門線の『永田町』駅があった。そこから半蔵門線に乗ってしまえば、乗り換えなしでものの6分あれば着いてしまうというわけだ。
というわけで、我々は国会議事堂を離れ、徒歩で永田町駅へ向かうことにした。

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国立国会図書館の脇を通り、そのまままっすぐ300mぐらい行けばもう永田町駅というところで、ふと横にある道路標識を見ると、そこには『最高裁判所』の文字が並んでいる。その標識から少し上に目をやると、横たわる都心環状線の高架の向こうに異様な威圧感を放つ白い建物が見えた。
思わず、道を渡ってその袂まで近づく。

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高倉「おぉー、これはすげえなぁ」

その佇まいは圧巻としか言いようがなかった。さすがは司法府の最高権威といったところか。あとで調べたところによると、岡田新一氏という建築家によって設計され、日本建築学会賞まで受賞している建物だそうだ。僕は一度、小学校の社会科見学でここの小法廷を訪れたことがあるのだが、そのときはただ「でけぇー!!」と言って同級生とはしゃぎ回っていただけのような気がする。人間、歳を取ると物の見方も変わるものなんだな、なんてぼんやりと考えながら、その白い塊を見上げていた。

最高裁をちょっと回り込むと、その裏手には国立劇場があるようだった。地図を見るとぴったりと隣接しているらしい。そのままぐるりと一周する。この辺りは、東京組にとっても意外な再発見のある、なんとなく不思議な空気を持った場所だった。

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思わぬ寄り道をしてしまったためちょっと迷いかけたが、なんとか永田町駅に到着。
路線図を眺めながら電車を待っているとき、駅ナンバリングの路線のアルファベットの話になった。つまるところ、なぜ半蔵門線のイニシャルは『Z』で、なぜ都営三田線のイニシャルが『I』なのか、という話だ。
考えてみると、半蔵門線は『半蔵門』をローマ字で書くと『HANZOUMON』だが、『H』は日比谷線ですでに使われているため、次の特長のある『Z』を採用。都営三田線の方は、『三田』をローマ字で書くと『MITA』だが、『M』は丸ノ内線、『T』は東西線ですでに使われているから間を取って『I』を採用、というのがいちばんまっとうな説に思える。
しかし、仮に半蔵門線の方の理由は納得がいったとしても、都営三田線の方がなんだか納得がいかないのはきっと気のせいではないはずだ。
そんな些細なことだが、しっかりいちゃもんをつける吉田氏。

吉田「まだ『HAN"Z"OUMON』の方がマシだよな」

それに便乗して騒ぎ出す次男くん、そしてそれにさらに乗る吉田氏。

次男「ハン──モン!」
吉田「ハン───モン!」
次男「ハン────モン!」
吉田「ハン─────モン!」

この2人、さっきのとんがったとこといい、ほっておくとやたら元気だ。
なお、この2人のはしゃっぎっぷりが高じて、昨年の東京23区くじ引きツアーでは『噴水事件』というアクシデントが起こった。お暇であれば併せてご一読頂きたい。


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夕方の4時40分。
渋谷駅前のスクランブル交差点は、相も変わらず非現実的な数の若者達で溢れかえっていた。

さあ、いざ渋谷には着いたものの、目的地を知っているのは吉田氏のみである。我々は、彼の言うなりに、人混みを縫うように駅前の交差点を渡る。
けっこう歩くのかと思いながら小走りに歩いていると、吉田氏が突如何かを指差した。

吉田「あった、ここだ」

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目的地の『マミドバーガー』は、駅前のスクランブル交差点に面した、渋谷マークシティの近くの小さいビルの1階にあった。こんなに駅の近くにあるのに誰も知らなかったというのがなんだか意外で、かつ少し不気味でもあった。
でも、ここで「やっぱやーめた」なんて言って引き返すようなことはできないのだ。とりあえずどんなものかを確認してみなければいけない。我々は、意を決して店の前まで近づくことにした。

店頭に立つと、バイトの女の子が「いらっしゃいませー」と微笑んでくれた。
どうやら、このあたりまではふつうのファーストフードとあまり変わらないようだ。
ここまでは、よかった。

しかし。
店のメニューを見たとき、ようやく事態が飲み込めた。
そこには、しっかりとした文字で『スイーツバーガー』と書かれていたのである。しかも、

「チョコはアレでケチャップはコレ! マミドバーガー \390」
「当店一番人気です!! フライフィッシュバーガー \440」

などという、かの有名な名古屋『マウンテン』の抹茶小倉スパゲティとか、愛媛県は道後『清まる』のとんかつパフェを連想させるような世にも恐ろしいフレーズが売り文句になっているのだ。それは本当かと思い、食品見本に目をやると、『フライフィッシュバーガー』なんてのは白身魚のフリッターの上にこんもりと生クリームが乗ったような作りになっている。

みんなで本当にコレを食べるのかどうするのかとわいのわいのやっていると、高倉仮面氏がいきなり野太い声でこう言い放った。

高倉「ビッグマミドひとつ!!!」

…やはり、食うのか……。

一人が注文してしまったら、もう連帯責任である。
仕方なく、長男くん、次男くんと僕は『クリームコロッケバーガー』を注文。
吉田氏は『マミドバーガー』だけかと思ったら、『マミドポテト』なんてヤツを「もちろん、揚げたてで」なんて言いながら追加注文していた。

会計を済ませて程なくすると、全員分が出来上がった。
店がただのスタンドのようになっていて、椅子に座って食べることができなかったため、マミドバーガーのすぐ脇の道路でテイスティング・タイムとすることにした。あまり行儀はよろしくないが、まぁ仕方ないものとしよう。
袋から取り出して紙の包装を開けると、ハンバーガーの形をした、しかし生クリームまみれの物体がコンニチハしていた。高倉仮面氏の頼んだ『ビッグマミド』なんかは、具がもはや生クリームとフルーツにしか見えない。

でも、買った以上、あとは食べるのみである。
我々は、「せーの」で、そのハンバーガー状の物体にばくっとかぶりついた。

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全員「…甘っ!!!!!」


…甘い。
とにかく、甘かった。
ハンバーガーというよりは、明らかにケーキなのだ。

そう、食べるまで気づかなかったのがお恥ずかしい限りという話なのだが、この『マミドバーガー』という店、早い話がハンバーガーの形に似せた生クリームケーキの店だったのだ。
僕が食べた『クリームコロッケバーガー』に関して述べると、バンズの部分はスフレタイプのケーキ生地。そこに、生クリームの周りにパウンドケーキの粉末をまぶしてコロッケの形にした、いわゆる『クリームコロッケ』と呼ばれるものと、あとはフルーツをいくつか挟み込んだもの、というのがその実態だったというわけだ。

それにしても、ゲテモノでなかったのはよかったものの、先ほど霞ヶ関でずんだ団子を食べたばかりである。取り立ててスイーツ好きな面子が一人もいない我々にとって、2連続で甘い食べ物というのはかなり堪えるものがあった。

そんなグロッキーな我々に、さらに追い打ちをかけるものが残っていた。
吉田氏が「揚げたてで」などと言いつつ意気揚々と注文していた『マミドポテト』である。

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これを口の中に入れた瞬間、どれだけコイツが芋けんぴであってほしかったと思ったことか。
確かにフライドポテトの形はしているが、実はカスタードクリームを無理矢理フライドポテト状にして無理矢理揚げました、というのがその正体。かなりがんばってその形にした努力は認めるが、実際は生暖かいカスタードクリームの天ぷらを食べているようなものだ。
一口程度ならまだいいけれど、二口三口と食べるうちに胸焼けしそうになってしまった。

高倉「…やられたな」
吉田「…いやー、オレもこれはやられた」

甘くてくどいもののダブルパンチを食らい、顔を見合わせる一同。
そして、マミドポテトを注文していた吉田氏ですら本気で耐えられなくなったのか、

吉田「よし! もうこのマミドいいね!」

などと言いつつ、マミドポテトを袋詰めにして隣にあったゴミ箱へ放り込む始末。
こうして我々は、マミドに完敗を喫したのである。


こうなってしまっては、もはや渋谷で観光をする気力などないのが当然である。マミドバーガーに行く途中にハチ公とスクランブル交差点は見たので、大阪兄弟にはあとモヤイ像ぐらい見せときゃ十分観光になるだろう、ということになった。

高倉「もう渋谷はいいね?」
次男「駅周辺で済ます気か!」
高倉「また渋谷引きゃいいんだよ! オレたちゃマミドにやられてんだよ!」

渋谷には、半蔵門線の他にもう1本、銀座線という地下鉄が通っている。もう一度渋谷に来たけりゃ、銀座線の渋谷を引け!というわけだ。むろん、もし万が一渋谷を引いたとしても、マミドバーガー再挑戦だけは避けたいところであるが。


辛いものが食べたい…
しょっぱいものも食べたい…
それよりも、まずはとにかく水が飲みたい…

こんな言葉を呪文のようにぶつぶつ繰り返しているうちに、あっという間にモヤイ像前に到着。もはや、観光の証拠写真を撮るのもやっつけ仕事だった。

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そして、速攻で『儀式』である。


全員「これでー、半蔵門線はー、制ー覇ー!!


儀式の後は、流れるようにくじ引きに突入。
次の目的地では、もっと観光スポットもたくさんあって、おいしそうな店に巡り会えますように。そう祈りつつ、次男くんに路線、吉田氏に番号のくじを引いてもらった結果…


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『m-05』と出た。
丸ノ内線分線の『中野新橋』駅に行くことになったそうだ。

「…ふーん」
「…で、何があるの? ここ…」

と言わんばかりの微妙な空気が一同の間に漂う。これは、明らかにピンチの部類である。
慌てて駅周辺の地図をめくり、何かめぼしいものはないかと探してみると、ほんのり太字でちょっとだけ目立つように書いてあったのが、この2つ。
『貴乃花部屋』と『ホルスタイン会館』である。

…どうにも、微妙だ。

つづく。

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