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メトロン星人東京をゆく【3】

前回までのあらすじ
 『とんがったとこ』は、予想通り、たいしてとんがっていなかった。


一之江駅までの戻り道。
『とんがったとこ』まではちょっと駅から遠かったのだが、同じ距離を歩いているはずなのに帰りとなると余計に遠く感じてしまうのは気のせいだろうか。
眩しい5月の日射しが照りつける中をだらだらと歩いていると、長男くんがこんなことを言う。

長男「いやー、この靴履いてきて正解でしたわー」

どうやら長男くん、今回のツアーのためにわざわざ新しい靴を買ってきたらしいのだ。
彼は、今回の企画が「東京駅に着くなりいきなり誰かの家に行って、2日間ずっと寝ずに雀卓を囲む」なんていうインドアなものである可能性も考えなくはなかったそうだが、やはりこのメンツでそれはないだろうと思っていたのだろう。
そして、その考えは正しい。
実際、本当にさんざんあちこちに連れ回すつもりなのだから。


さて、次の目的地を目指し、午後2時半過ぎに一之江駅を出発した我々。
30分経って、ようやく1回目の乗り換えポイント、住吉駅に到着する。

次男「もう3時だ! 早ぇ!」
吉田「とんがってただけだぞ?」

そう、この東京メトロの旅、気づけばまだ1路線しか"制覇"していないのだ。それでも時刻はもう3時。初日に、もし日付が変わるギリギリまでがんばるにしても、あと9時間しかないのである。
移動と観光、それと食事。これを全部片づけるとなると、1路線あたり2時間ぐらいかかってしまうわけだが、そんなペースではまずい。せめて1日目は6つぐらい片付けておかないと、翌日までに全制覇できなくなってしまうということに気がついた。

かといって時間に急き立てられることもなく、乗り換えの電車を待つ5人。恐ろしいほどマイペースである。

ということで、次に我々が向かう先は、

Metron11

『M-15』。丸の内線の霞ヶ関駅である。
一之江駅からは、ここ住吉まで都営新宿線に乗った後、そこから半蔵門線に乗り換えて大手町へ、そしてさらに丸ノ内線へと乗り継がないと着けないのだ。そんなにたいした距離ではないはずなのだが、乗り換えがまためんどくさい。そして、それが我々の時間と体力をじわじわと奪っていくのである。

Metromap02

ときどき、大阪や名古屋の地下鉄がまっすぐ走っていてわかりやすいなぁ、とうらやましく思うことがあるのだが、東京の地下鉄というのは、ちょっとうねうねしていて一見わかりづらい造りをしている。実際、路線図を見ると、何本もの地下鉄が皇居の周辺部をぐるっと取り囲むように走っているのがよくわかる。それも「皇居の下は通ってはいけない」というルールがあるせいらしい、というのは有名な話である。
その話にも諸説あって、

「そもそも、皇室の私有地を通すのはまずい」
「東京の地下鉄はかつての市電の路線を元に経路を決めた。当然、皇居を通り抜ける市電などなく、そのため皇居の地下を通る地下鉄もない」
「皇居の地下に穴を空けると真下から爆弾か何かで狙われるので、テロ対策のために穴を掘らせない」

というまともな説もあれば、

「皇居の下には実は巨大な地下核シェルターを兼ねた秘密基地があり、地下鉄が通過できる場所がない」
「中国から盗まれた北京原人の骨が隠されているから地下は掘れない」
「旧陸軍の膨大な弾薬が埋蔵されている」
「風水的に地下鉄は『陰』の気脈だから、皇居の地下を通すと天皇家に不調をもたらすのでダメ」
「実は六本木や市ヶ谷につながる地下通路がある」
「いやそれは奥多摩まで続いている」

なんていう都市伝説のような説もあるらしい。つくづく、人間というのは自分の手が届かないところに対する想像力に長けた生き物だなぁ、と思ってしまう。


結局、霞ヶ関に着いたのは3時15分であった。
さすが日本の中央集権の象徴となる駅だ。黄色い案内板には官庁の名前がびっしり書かれている。

Metron12

だが、この日は5月3日、憲法記念日。紛うことなく国民の祝日である。
当然、ゴールデンウイーク真っ只中に霞ヶ関近辺で仕事している人がいるわけがない。普段は国家公務員さん達でごった返しているであろうはずの駅はひどく閑散としていて、通る人もまばら。店もどれもこれも閉まっていて、なんだかものすごく寂しい雰囲気であった。


ところで、ここ霞ヶ関の観光スポットであるが、まぁ近いしとりあえず国会議事堂は見ておこうよ、ということになった。自分にとっては、小学校の社会科見学以来だ。
ただ、国会議事堂と官庁街だけでは、本当に社会科見学となんら変わらなくなってしまう。そこで、他に何かないかと思ってじっと地図を見ていると、『日本水準原点』というものを発見した。
人は、「原点」とか「中心」とか「元祖」とか、英訳したときに必ず「The」がつくような感じの、そういった言葉にはものすごく弱い。言い換えれば、無条件でそそられてしまうということだ。
そして、この5人も、例外ではなかった。

階段を上がって地上に出て、「人がいないねぇ」「静かだねぇ」などと言いながら、のんびり外務省と国土交通省の間、霞ヶ関坂を歩く。
しかし、みんなまったりしていたのだが、なぜか長男くん一人だけがやたらとテンションが高い。

長男「ボク、もうおのぼりさん状態ですわ!」

確かに、大阪にはここまで密集して巨大な官庁街というのがないせいなのか。その雰囲気のどの辺が彼を触発するのかよくわからないが、回りのビルやらなにやらがどんどん彼のスイッチを入れていくようである。

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霞ヶ関坂を登り終わり、国土交通省の前を通過すると…

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長男「すげーすげー! 国土交通省の看板! あれ見たことありますわ!」
吉田「あの役人とかいろんな人が出てくるヤツ?」
長男「そーですそーです! どんどんテンション上がってきますね!」

皇居が見える大きな交差点に差しかかると…

Metron15

長男「皇居の周りをジョギングする理由がよくわかりましたわ!」
   これは広くて気持ちいいですもん!」

いつも思うのだが、彼のリアクションはその場にうれしいと思ったであろう感情をストレートに表していて、本当に素晴らしい。ここまで素直に喜んでくれると、いくらくじを引いてたまたま来たところとはいえ、連れてきた甲斐があったというもんだ。


目的の『日本水準原点』を探して国会議事堂の近くにある公園のような敷地(どうも、「国会前庭洋式庭園」という名前だったらしい)に入ると、入口からすぐのところに、膝の高さ程度にも満たない石碑のようなものを見つけた。
『水準点』と、書いてある。

Metron16


全員「えぇー、コレが…!?」


…どうにも、しょぼい。
誰か悪意を持った人が夜中に小一時間でもかけてつるはしとスコップで掘り返したら簡単に持っていってしまえそうなサイズだ。
でも、『水準点』と書いてあるのだ。
地図には大きな字でしっかりと書かれていたものの実態がまさかこんなものであろうとは、なんだかがっかりである。

これが現実というものなのかと思い、仕方なくその『水準点』の写真を撮っていると、いつの間にそんな奥の方まで行っていたのだろうか。遠くの方から次男くんが全力で走ってきた。
こう、叫びながら。

次男「気をつけろー! その水準はニセモノだー!」
全員「なにぃ───!!!」

どうも、そのニセ水準からちょっと上のこんもりと丘状になったところに、本物の『日本水準原点』があるらしいのだ。
我々は、さっきまで騒いでいたニセ水準はそっちのけで、大急ぎで丘を駆け上がった。

Metron17

本物はやっぱりというか、明治24年5月から設置されているというだけあって、さすがに立派である。実際にこの建物が明治24年からあるかどうかはまた別の話だろうが。でも、日本の標高を決める基準点たるもの、やはりこうでなくてはならない。
…それにしても、次男くんが気がつかなかったら、ニセ水準を本物と信じ込んだまま終わっていたんだろうかと考えると、ちょっと恐ろしい気がする。

危うくトラップに引っかかりそうになったが、無事『日本水準原点』を見たということで、とりあえず観光は目的達成、ということになった。

ここで問題なのは、もうひとつのルール「必ず食事をする」というヤツだ。
振り返ってみると、この場所に辿り着くまでにレストランや喫茶店はおろか、コンビニのコの字すら見当たらなかった。つまり、絶望的に食べるものを売っているところがないのだ。
そういう場合は、やむを得ない。早くも2駅目にして"非常手段"の出番である。
買い置きしていた「ずんだ団子」を食べるほかない、というわけだ。

Metron18

ちょっと生あたたかくなった団子を頬張る5人。
またもや自販機すら近くになかったので、やたらと喉が渇く。
勢いでルールをひとつ追加してはみたものの、いざ始めてみてこういうアクシデントがあると、毎回毎回なんかしらんを食べながら全路線を制覇していくっていうのは、やっぱりいくらなんでも無理があるんじゃないだろうか。そう考えながら、すぐ側にそびえ立つ、三権分立を象徴しているという時計塔をぼんやり眺めていた。

Metron19


さて、吉田氏も「よう、今日ちょっとギジってかねーか?」と言うことだし、ちょっとだけ国会議事堂へ。メトロンさんにも、ちょいと国会議事堂を狙ってもらうことにした。

Metron20

でも、メインはやはり『日本水準原点』だったということで、何枚か写真を撮るだけで国会議事堂観光はあっさりとおしまい。
ということで、残るは『儀式』である。


全員「これでー、丸ノ内線はー、制ー覇ー!!


気がつけば、時刻はもう4時。いい加減とっととくじを引いて、早いとこ次に行ってしまわないとさすがに本当にまずい時間なのだ。
あまり記憶が定かではないが、このときは確か、次男くんが路線を、長男くんが番号を引いたんじゃなかったかと思う。
その結果は…

Metron21

『Z-01』。
半蔵門線の『渋谷』駅、と出た。

次男「渋谷ぁ!?」
高倉「渋谷かー…」
たい「渋谷ねぇ… どこ行きゃいいんだ!?」

地下鉄の駅はたくさんあれど、まさか、ど真ん中直球で5人全員がよく知っているウルトラメジャーな駅を引いてくるとはそうそう予想はしていなかったので、一同思わず面食らってしまった。
あわてて必死で渋谷の観光スポットを考えたものの、ハチ公前に行くのも、『電力館』に行くのも、『たばこと塩の博物館』に行くのも、どれもいまひとつ冴えない。

これは困った…と思っていたその矢先。
何か、ひらめいたのだろうか。吉田氏が突然、「そうだ!」と叫んだ。


つづく。

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Comments

ニセモノ、GJ!!!!!w

…って、どう違うんですかね?>水準点と水準原点

Posted by: お茶。 | June 27, 2006 at 02:13 AM

相変わらずの長文、急がせてしまったみたいで申し訳ない(^_^; アハハ…
しかし、オモロいわぁ〜!次回も楽しみです。
今後の観光の参考にさせてもらいます(笑)

Posted by: Car-Key♪ | June 27, 2006 at 07:10 AM

うわっ~~~~

そうだ!!!!!の続きは何なんだぁーーー!!w

自分、NHKが浮かびました。。
平日のお昼ならTVに映れたぞ!w

Posted by: neena | June 27, 2006 at 11:14 AM

あ~、官公庁の名前が並ぶ表示に感動する気分はよくわかりますよ!
これは地味に、「東京観光」の正しいありかたっつーか、醍醐味ってもんじゃないですかね?

Posted by: PON | June 28, 2006 at 01:49 AM

>お茶くん
我々にあんな大がかりなセットを作れる美術スタッフはおりませぬ…
ちょっと調べたんだけど、結局あのニセ水準はなんだかよくわかんないよ(苦笑)

>Car-Keyさん
いえいえ、だいたいはできてたんですけど、仕上げがね(苦笑)
長いし、ぐだぐだ書いてていい加減飽きられてやしないかってのが心配なんですが、まだ楽しみにして頂いてるっていうのが励みになります('-'*)

>neenaさん
以下、次号!

平日じゃなくてバリバリの祝日ですってば(笑)<旅行当日

>PONさん
そうやって言われてみると、ちょっと気持ちわかるかも? 東京に来る外人さんとかって、もしかしたらそういう官公庁群を観光してるのかもしんないしね。
実際住んでたりよくそういうとこ通ったりすると感動って薄れちゃうんだよねー。
確かに、おいらも昔大阪に初めて行ったとき、中之島や大阪証券取引所のあたりで感動した覚えがあります。

Posted by: たい | June 28, 2006 at 07:23 AM

休日ってわかってるわぁ~~~い!
渋谷と言えば丸○町でヨロシク!
(ノ ̄▽ ̄)ノ⌒( ̄▽ ̄⌒)(¬ ̄▽ ̄)¬キャアキャア♪

Posted by: neena | June 28, 2006 at 01:51 PM

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