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メトロン星人東京をゆく【2】

前回までのあらすじ
 今年は東京の地下鉄をくじ引きで回ることになってしまった一行。今年最初の目的地は、都営新宿線の『一之江』駅。果たして、そこで何が5人を待ち受けるのか。


都営新宿線というのは、新宿を基点にして、東京の中心部をずっと東に抜けてそのまま江戸川を越え、千葉県の本八幡に至る路線である。下町というよりは、どちらかというと東京湾の埋立地に近いエリアを走る電車のため、千葉に近づけば近づくほど普通の住宅街となっていく。

Metron04

次男くんは今回くじを引くにあたって「今回はいい引きするよー、ゴール右隅あたりにシュートばんばん決めるよー」なんて言っていたが、このこの初っ端のくじ『一之江』というところはゴールではなくて東京の右隅である。そして、「隅」なだけにやっぱり住宅街であって、全然観光スポットも何もありゃしないのだ。

だが、本当に何もないのかなんて、実際に足を運んで、自分のこの目で確かめてみないとわからないのも事実だ。そう考えを改め、気を取り直すことにした5人。東京駅からしばらく歩いて『日本橋』駅から都営浅草線に乗り、『東日本橋』駅から都営新宿線の『馬喰横山』駅へ向かい、そこから『一之江』を目指す、というルートを辿ることにした。

Metromap01


さて、ここで時間をちょっと前に戻して、前回軽くしか触れなかった「デパ地下で団子を買った」という話にフォーカスを置くことにする。

実は、この企画の1ヶ月ほど前、吉田氏が次男くんに対して「東京でどんなことして遊びたい?」という質問をメールで投げかけていたのであるが、それに対する次男くんの返事は以下のような内容だった。

- - - - - - - - 8< キ リ ト リ セ ン - - - - - - - -
 せっかく集まるんで、みんなで競いあうような遊びもしたいねぇ
 東京VS大阪でいろんな遊びやるもヨシ

 観光としては、東京らしいものを食べてみたいなぁ
 これまであまり名物には縁がなかったんで(汗
- - - - - - - - 8< キ リ ト リ セ ン - - - - - - - -

我々東京組は、考えた。
去年はひたすらくじで引いた行き先に翻弄され、大阪兄弟は東京みやげを買う時間すら満足に与えてもらえなかったという事実がある。だから、せっかく新幹線代を出してわざわざ東京くんだりまで出てきている彼らのために、次男くんの希望通り、今回は東京名物をみんなで食べる時間を設けようというわけだ。たぶんきっと、どこか途中で東京名物の食べられる駅に下車できるだろうから、そこで1回や2回うまいものを食べさせてあげることができるだろう。最悪、そういう駅を引かなくても、どこか近いところに途中下車してもいいと言う腹づもりでいた。

でも、みんなが集合した直後のこと。
「まずはデパ地下に行くぞ」と言い出したのは高倉仮面氏だったわけだが、なんだか妙にそれが強引なのだ。いいから、とにかくデパ地下に行って東京名物買いやがれこの野郎!というぐらいの無理矢理っぷりだ。
おかしい。いくらなんでも不自然である。事前に企画を練っていた段階で「最初にデパ地下に行く」なんていう予定は立てなかったはずなのに。
高倉仮面氏以外の全員が狐につままれたような顔をしている中、彼はどんどん先陣を切ってデパ地下へと向かっていく。
どうやらこの男、何か企んでいるらしい。この時点でわかったことは、それだけだった。

デパ地下に着くと、さすがに東京駅なだけあって、東京ばな奈や焼栗屋の東京メロンパンとらやの羊羹花園万頭など、いろいろな東京名物が所狭しと陳列されている。しかし、どれもこれも、さすがに東京に住んでいても食べたことがあるものばかりで、どうも食指が動かない。
と、そんな中、我々の目にすっと飛び込んできたのが「ふるやの古賀音(こがね)だんご」である。
実際、それはうまそうだった。幸いにして誰も食べたことがなさそうだったので、その場でふるやの団子を買うことに決定。何種類かある中で、やはりこの言葉には弱いのか「期間限定」という札書きのあるずんだ団子を選び、購入したのである。

Metron05


またここで時間を戻そう。東京駅からまっすぐ延びる大通りを歩き、日本橋駅に向かっていたときのことだ。誰が言い出したのか忘れたが、「なんで団子を買ったんだ?」という話になった。
そこで、高倉仮面氏が、熱弁をふるう。前回は大阪兄弟に満足に東京名物を食べさせてあげられなかったのは、さすがにちょっと申し訳ないことをしたと。だから、みんなで東京名物を食べるためにデパ地下に行ったのだと。
それには、大阪兄弟2人も、吉田氏も、僕も納得した。もっともな道理だったからだ。

しかし、我々は、その後の彼の言葉に耳を疑った。

高倉「全部の駅で食おう」

耳を疑うのと同時に、なぜあんなに強引にいきなりデパ地下に行ったのか、なぜわざわざ団子を買ったのか、すべてが氷解した瞬間だった。

…そうか、この男が企んでいたのはコレだったのか。
つまり、企画の段階でボツになった東京名物食い倒れの話を、彼は諦めていなかったのである。今回乗る予定の東京の地下鉄は全部で13路線あるので、1路線乗るごとに食べると2日で13食になってしまうわけだ。

次男「何も13食にしろとは言ってねーぞ!!」

即座にツッコむ次男くん。当然の反応だ。
それとは対照的に、それこそ何が起こっているのかわからないような顔をする長男くん。そして、こんなことを言う。

長男「次男さん『吉田さんと最近メールしてるんですか?』って言ったら『ううん?』って言うてたやないですか!」

どうやら長男くんは、次男くんと吉田氏との間でメールのやりとりが行われていることを全く知らなかったようである。本当の意味での被害者は、もしかしたら彼なのかもしれないと思ったが、高倉仮面氏は長男くんに情けをかけるそぶりを微塵も見せず、さらっと丸め込もうとする。

高倉「しょーがないでしょ、企画OKしちゃったんだから」
次男「誰がよ」
高倉「メトロン星人が」
次男「あー、そりゃしょうがねーや」

長男くんでなく、次男くんがあっさり丸め込まれてしまった。
そんなわけで、「メトロン星人のせいで」ということになってしまったが、高倉仮面氏の思惑通り、ここでルールを追加することになった。

① 地下鉄の路線を表すアルファベットをひとつのくじに、それぞれの路線の各駅に振ってある駅番号をもうひとつのくじにする
② くじを引いて出た駅で降りて観光をする
あと、食事もする
④ 観光したら、その路線は『制覇』とし、次のくじを引く
⑤ これを繰り返し、東京の地下鉄の全ての路線を駆使し、存分に大阪兄弟に東京観光してもらうことを目的とする

このルールがあとあと"効いてくる"ことになるわけだが、それはまたの機会にお話することにしよう。


それからああだこうだと言い合いながら、どれぐらい歩いただろうか。日本橋駅の改札は、意外と遠いところにあった。
全員で都営地下鉄・東京メトロ共通の一日券を購入し、自動改札をくぐる。程なくして、我々を目的地へ運んでくれる地下鉄がホームにすべり込んできた。

Metron06


さて、実際に一之江に向かうべく地下鉄に乗り込んだわけだが、冒頭で述べた通り、行くところが全く思い浮かばない。住宅街に行ってもしょうがないんだよなぁ…と思いながら、駅周辺の地図をぼんやりと眺めてみても、やっぱり住宅街と川とコンビニぐらいしか見当たらない。
途方にくれていると、同じく地図を眺めていた吉田氏が、突然こんなことを言い出した。

吉田「このとんがったところに行きたい!」

Metron07

まぁそりゃ、地図を見る限りはとんがっているけれども、そんなところに行っても…と思っていると、なんとそれに食いついたヤツがいる。
次男くんだった。

次男「由緒正しいとんがりかもしれないよ?」

それを聞いた吉田氏、食いついてもらってうれしくなったのか、声のトーンが明らかに一段上がった。

吉田「とんがったところからこんな島が見えるよ! この島がどんな島かはしらないけどね!」

さらに調子に乗る吉田氏。この人も、調子に乗り始めると止まらない。

吉田「一之江駅からタクシー乗って運ちゃんに『おーい、とんがったとこ行ってくれ』って言いたいねぇ」
高倉「とんがったとこ行ったらきっとアンタこう言うよ、『意外ととんがってないね』って」

結局、きっと水がバックだから写真映えするに違いないだの、今日は天気がいいから水辺は開放的で気持ちよさそうだだのという話になり、その『とんがったとこ』我々の観光スポットとすることになった。
行くところが全くないよりはマシだろう、ということである。ひどい話だが、止むを得ないのだ。他にいい観光スポットがあれば、今からでも教えていただきたいものである。

行き先が決まってからも、地下鉄の中でひたすら地図を眺め続ける「地図マニア」が3人いた。
吉田氏と大阪兄弟である。

吉田「ここここ! ここ! この細いとこ! ここ行きたい!」
長男「ここですか!」
吉田「そう!ここだよ! もしかして、そろそろ通過するんじゃないのか?」

彼らがそう言っている間に、地上に出て走り続けていた電車はその「細いとこ」あたりを通過していく。

吉田「ほらほらほら! 今の! 今の『細いとこ』じゃない!?」

『とんがったとこ』の次は『細いとこ』で興奮しっぱなしな3人。
それとは対照的に、僕の隣にでれんと座っていた高倉仮面氏は、「俺は吉田クンのそういう心理がサッパリわからん…」とボヤいていた。


一之江駅の改札を出ると、できてからあまり時間が経っていないのか、整備された感のあるきれいな広場が眼前に広がる。しかし、ぽっかり抜けるように晴れた青い空に向かって伸びていたのは、展望台でもテレビ塔でもなく、きっと雨後の竹の子のようにできたであろうたくさんのマンションであった。天気がよくて気持ちがいいのはいいが、やっぱり観光名所なんてどこにもありゃしないじゃないかという雰囲気が一同の間に漂う。

だが、吉田氏だけは妙に自信たっぷりである。
「観光の名人! 大丈夫! イッツ大舟ライディング!」なんて言い放ち、胸をドンと叩いてみせた。自ら選んだ場所(つまり『とんがったとこ』)で、お前らをたっぷり楽しませてやるよ、と言いたいようだ。
そこまで言うなら、楽しませてもらおうじゃないか。我々は、泥舟に乗ったつもりでその『とんがったとこ』へ向かうことにした。

地図を頼りに川べりを歩き、水門を通過する。
さらにしばらく歩くと、『交通公園』という看板と、モノレールの自転車版のようなものに乗ってはしゃぐ子供の姿が見えてきた。道端に停まっていたホットドッグ売りのミニバンを横目に、地図らしいものが書いてある案内板に近づくと…

Metron08

ホントにとんがっている。
どうやら、ここが我々の目的地のようである。

吉田・次男「これだ!! 『とんがったとこ』だ!!」

そう言うやいなや、その突端に向かって走っていく吉田氏と次男くん。
吉田氏は勝ち誇ったようにふんぞり返り、次男くんは両手を上に挙げて『とんがったポーズ』をしながら飛び跳ねて喜びを全身で表現している。

でも…

Metron09

予想通り、あんまりとんがってないのは、きっと気のせいじゃないと思うんだが。
ねぇ、吉田さん?


さて、目的地に無事到着したので、「観光をする」というミッションは無事終了ということになる。
ということは、残るは「食べる」ミッションなのだが、この『とんがったとこ』の周辺、東京名物どころか飲食店やコンビニも、ひいては自販機すらもなさそうな雰囲気である。

さっき素通りした、ホットドッグ売りのミニバン以外は、何も。

その黄色くてやたらと派手なミニバンは、『とんがったとこ』からちょっと戻ったところにまだ停まっていた。車体には「大學堂」と書かれている。そういえば、以前神保町あたりでも同じミニバンを見かけた記憶があったが、どうやら都内を販売エリアとしてあちこちに出没するホットドッグ屋さんらしいということがわかった。
一応こちらを拠点としているのなら、きっと大阪では食べられないホットドッグなんだろう。そんな理由で、今回食べる"東京名物"は『チーズドッグ』に決定した。そして、東京駅で買ったずんだ団子は、本当に食べ物屋が何もない駅を引いたときの緊急手段として食べられるよう、しばらく食べずに取っておくことになった。
それはいくらなんでも無茶苦茶だという声が聞かれそうだが、そもそもこの企画自体が無茶苦茶なんだから、せめてそのあたりには目をつぶっておいていただきたい。

Metron10

出来たてのホットドッグを受け取って再び『とんがったとこ』に戻り、適当なことを言いながらそいつをむしゃむしゃと食う我々。

長男「けっこううまいですね!」
吉田「とんがっているからだよ!!」
長男「味にとんがりがありますね!」

その後、あまりの天気の良さに5人とも骨抜きになったのか、しばらく『とんがったとこ』で水辺をぼんやり眺めたりして、ぐだぐだとゆったりした時間を過ごした。本当は、公園にあったモノレールの自転車版のようなものに乗って「わーい」なんて言ってみたかったが、子供がいっぱい並んでいたのでさすがに断念。それだけが少し心残りであった。

それはそうと、いつまでもとんがっているわけにはいかない。
我々の本来の目的は東京の地下鉄を全路線制覇することであり、そのためにはあと12回もくじを引かないといけないのだ。
…ということは、あと12回、何かを食べないといけないのか。想像すると、ちょっと気が遠くなった。

まぁとにもかくにも、次に行くと決まったら『儀式』をやらなければいけない。
5人で円陣を組み、気合いの入ったダミ声で、こう宣言する。


全員「これでー、都営新宿線はー、制ー覇ー!!


そして、次の行き先を決めるくじ引きタイムである。
話し合いの結果、大阪兄弟がひどいくじを引いたときに毎回罵倒するのもさすがに可哀相だということで、今回からは全員の持ち回りでくじを引こうということになった。
今回、高倉仮面氏が路線を、僕が番号を引いた結果は…

Metron11

『M-15』。
路線図で確認したところ、丸ノ内線の『霞ヶ関』駅のようだ。
全員から「おぉー」という歓声のような声が漏れる。
首都圏の中枢部が目的地になるというのは、去年のツアーも含めて今までになかったことだからだ。なんだか社会科見学のような気分だが、長男くんが「国会議事堂が見れますね!」と早くも喜び気味だったので、まぁよしとすることにした。

日本の中枢・霞ヶ関は、我々に一体どんな顔を見せてくれるのだろうか。
一行は、ゆっくりと一之江駅を、そして霞ヶ関を目指して歩き始めた。
封筒をしまうのにちょっと手間取って出遅れた僕は、こっそり用意していた『はずれくじ』をそっと3枚茶封筒に入れ、みんなの後を追った。

つづく。

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Comments

一之江っていえば水上バスだと思ったんだが、
運休してるのね・・・

メトロン星人がどうやってカードを掴んでいるのか、
すごーく気になる。

Posted by: yake | June 07, 2006 at 04:41 AM

モノレールの自転車版>
我が地元、栃木の「りんどう湖ファミリー牧場」内ではそのものズバリ「サイクルモノレール」と呼ばれてました。
絶叫系もまるでダメなボクはこれがせいいっぱいです。

Posted by: PON | June 07, 2006 at 05:20 AM

>yake
昔水上バス通ってたんだ?
確か競艇かなんかがあった気がするんだけど、
もしかしたら江戸川競艇と勘違いしてるかもしれない…

メトロンさん用両面テープを一之江駅前のコンビニで買ったのさ。

>PONさん
絶叫系どころかすげぇのどかな乗り物なような。<サイクルモノレール
ファミリー牧場のやつって余計のどかそうだよね。

絶叫系は、おいら早いのとか回るのは平気だけど落ちるのは苦手っす。

Posted by: たい | June 10, 2006 at 01:16 AM

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