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東京23区くじ引きツアー【2】

前回までのあらすじ
 東京23区くじ引きツアーに出発したばかりの一行は、いきなり"ババ"と想定していた荒川区のくじを引いてしまったため、泣く泣く荒川区に向かうこととなった。


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このくじを引くたった20分ほど前に、『荒川区』と『足立区』が"ババ"だという話をしたばかりである。
それなのに、初っ端のくじからいきなりその"ババ"候補の片一方を引いてしまうわけだ。のっけからこの企画の恐ろしさを垣間見させる出来事であった。

荒川区に向かうといっても、さてどうしたものか。
いったい荒川区には何があったっけかと思い、事前リサーチの結果を印刷した紙を取り出して見てみる。ふむふむ、どうやら荒川区の名所としてピックアップしたのは1ヶ所だけだったようだ。

『荒川自然公園』

…脱力である。
『荒川』の名が冠してあるだけで、とどのつまりただの公園でしかないのだ。観光名所と言うにはあまりにも程遠い。
東京都区分地図を眺めてみたのだが、結果は同じ。パッと見、住宅街と公園と電車の操車場しかない。

どうせなら操車場でも見に行くか?なんて話していると、東京の観光名所に詳しい吉田ナゴヤ氏が何かを思い出したようだった。

吉田「投込寺って荒川区だったっけ?」
高倉「永井荷風か! アンタずいぶん渋いとこ思い出すねぇ」
吉田「投込寺は…(正式名称が)浄閑寺。(地図を見て)あ、あったあった。三ノ輪の近くだね」
たい「ギリギリ荒川区ですねぇ」
長男「じゃあ、その投げ込み寺ですか? そこ、行ってみます?」

こうして、荒川区の観光地は『投込寺』こと『浄閑寺』に決定した。
どういう名所なのか、なぜ『投込寺』なのか、一体何を投げ込むのか、僕はこの時点で全てを知らないまま、とにかく目的地に向かうこととなる。

まずは、最寄りである地下鉄三ノ輪駅に向かう…はずなんだが、どうやって行けばいいのかがすぐわからない。路線図を調べたり、うろうろと地下鉄の入口を探し始める東京組の3人。

次男「何なんだアンタら! 東京の人だろ!」
たい「いや、だから東京駅広すぎてわかんないんだってば!」

案内する側としては最低の答えである。

結局、東京駅からJR山手線で上野駅まで行き、そこから営団地下鉄日比谷線で三ノ輪駅に向かうこととなった。
上野駅に到着したのは、ツアー開始から30分とちょっとのところだっただろうか。

次男「開始から30分経ってるのに、まだ移動しかしてない気がするんですけど」
たい「くじの引き方によってはほとんど移動ですからねぇ~」
次男「いや~っ、東京ってなんもないですね!何にも見えないよオレ!

次男くんが、早くもぼやき始めた。
どうも、たったの30分でこの企画の"本質"を見抜いたようである。

ちなみに、この企画のルールを改めて説明すると、

 ・くじを引いて出た区の観光名所とおぼしきところに行く
 ・そこで参加者全員の集合写真を撮る
 ・その時点でその区は"制覇"とし、次のくじを引く
 ・これを繰り返し、東京23区を余すところなく全て観光することを目的とする

というものである。
時間の都合を考えると、1つの区の観光名所を回れるのは、1ヶ所かせいぜい2ヶ所が限界である。ということは、先ほど"制覇"した『千代田区』を例に挙げると、もう次の区に移動してしまったらもう『皇居』とか『二重橋』とか『千鳥ヶ淵』とか『国会議事堂』とか『神田明神』とか『湯島聖堂』とか『ニコライ堂』は全て見ているヒマなどなくなってしまう。つまり、行くところ以外の観光名所は、全て『ない』のと同じことになってしまうのだ。なんとも冷酷無比なルールである。

移動中に通過する区ですらそんな扱いか、という話になった。
もしこれが本当にテレビの深夜番組だったら、きっと目的の区以外は全てモザイクがかかったり、音声に『ピー』が入った状態になってしまうんだろうなぁ、ということで一同盛り上がった。いっそ電波少年的に到着地まで大阪兄弟に目隠しをするかという話も出たが、あまりにもかわいそうなのでやめておいた。

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上野駅の不忍改札。ここは台東区なのでたぶんこうなる

ふと、次男くんが腹を据えたような発言をする。

次男「何にもないところからいろいろ創っていくわけですよ!」
たい「前向きな発言だ!」
次男「前向きじゃないとやってけないわけですよ!」

なんだ、やっぱりやけくそじゃないか。

そんなやけくそ気味の次男くんを含む一行は、日比谷線を乗り継ぎ、三ノ輪駅に到着した。
目的の『投げ込み寺』は荒川区だが、ほぼ台東区に隣接するところにあった。ルール上、当然荒川区に突入しないと『制覇』ということにならない。吉田氏などは「三ノ輪駅は台東区だから、目ぇ開けちゃダメだから!」と言い出す始末である。
投げ込み寺の隣の道路は、ちょうど台東区と荒川区の境目であった。
感慨深そうに、次男くんがこう言う。

「いやー、38度線の気持ちがよくわかったよ」

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確かに、普段生活していて、ここまで区の境目を意識することはないだろう。
そう考えると、これもひとつのいい機会なのかもしれない。
区の境目を意識することがどこでどう何の役に立つのかは、知ったこっちゃないが。


さて、ついに最初の目的地『投込寺』こと『浄閑寺』に到着である。

門の前に看板があり、『投込寺』の名前の由来が記されていた。
なんでも、安政2年(1855年)の大地震の際に亡くなった新吉原の遊女達の遺体がこの寺に投げ込み同然に葬られた、ということからついた名だそうだ。その遊女の暗く悲しい生涯に思いをはせ、作家の永井荷風がこの寺をたびたび訪れたとのことである。

…とんでもなく重苦しい名前の由来である。
このツアーのいちばん最初の観光地がお台場だの東京タワーだのではなくこんな場所だというところが、いかにもこのツアーの行く末を予見しているようにも感じられた。

寺の門をくぐり墓地の奥の方へ進むと、そこにはひっそりと永井荷風の碑と筆塚が佇んでいた。

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碑には『偏奇舘吟草』という作品の中の『震災』という詩が刻まれていた。筆塚には、永井荷風の小筆と歯が納められているそうである。
その向かいには、『新吉原総霊塔』と書かれた大きな慰霊塔が建っていた。それを見ると、荷風が前出の詩を詠んだときのもの悲しい気持ちというのもなんとなく伝わってくるようであった。

しかし、本来の我々の最終目的はここではないのである。それを忘れてはいけない。

たい「終わり…ですかね?」
吉田「あー、これで荒川区は終わりだねぇ」
長男「短っ!!」
高倉「よし、くじ引こう」

とことんドライな連中である。

先ほどは長男くんが引いたということで、次は次男くんに引いてもらうことに。
そして、次の1枚は…

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『北区』。

極端にハズレというわけでもなさそうだが、東京人にとっては、ここも目立った観光名所がなさそうなイメージがある。
しかし、くじで引いてしまった以上、行かなければいけないのは変わりないのだった。

行き先が決まったところで、寺の正門前に出て集合写真を1枚パチリ。
そして、『儀式』である。


全員「これでー、荒川区はー、制ー覇ー!!


やはり、ひとつ事を為し遂げるというのは気持ちがいい。
これで安心して次の目的地に向かうことができるというものだ。


移動するために向かった三ノ輪駅のホームで、ふと高倉仮面氏が思い出したようにこう言った。

高倉「吉田さん、あのギャグまだ言ってないんじゃないのかい?」
吉田「あ!忘れてた!」
高倉「三ノ輪駅はもう台東区だからもう荒川区に関係したギャグは言えないよ?」
吉田「なに~!? しまったなぁ…」
高倉「まぁ、いいよ。今のうちに言っときなさいな」

吉田「では… 洗濯物、干してビックリ、アラ乾く~っ(荒川区)」

しかし、吉田氏渾身のギャグは、ちょうどそのときホームに到着した電車の騒音でかき消されたのだった。
合掌。


つづく。

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Comments

あー、あそこそんな有名なとこだったんですか。
通勤路で毎日通ってます。

足立区は名所たくさんありますよ~。
歴史的建造物もたくさんあるし。

荒川区はババっぽいけどw
南千住にできたあたらしいショッピングモールで買い物気分でも味わうか、都営荒川線の始発駅を見て物思いにふけるかくらいしかうかびませんなー。

あ、日暮里の羽二重団子があったか。
あれは有名。一度食すべし。

Posted by: ゆた@荒川区民 | May 09, 2005 at 04:45 AM

何気にこの日記で23区のお勉強が出来るのかなぁなんて思っているのですが・・・
荒川区:投込寺、永井荷風 以上
やっぱり荒川区 未知のゾーンです

因みにギャグ言うのもルール!?
なんて思っちゃいました

Posted by: いとしゅん | May 09, 2005 at 11:20 AM

 私,こーゆーの大好きなんだよねー。これ,参加したかったなー。たとえ,何区であろうとも,とりあえずなんとか楽しめるもの探そうとしちゃうよね。
 いやー,これ,私行ったときにもう一回やって!!っていったら・・・・怒る?

Posted by: 軟 | May 09, 2005 at 08:39 PM

うみゅ~おもしろい!
だが、、、質問!!ほんとに東京人?w
一応、都内に在住してたし、地下鉄の面白さを知ってるんで・・・・
なじぇ、上野までJRで行くんだよ~(・_・、)

大人5人が東京駅で右往左往してる姿を想像しちゃいました♪

次はどこ行くんやろかぁ~o(^-^)oワクワク

Posted by: neena@練馬区(本籍~) | May 09, 2005 at 10:26 PM

>ゆたさん
投込寺、そこまで有名な方ではないと思うよ(苦笑)
吉田氏と高倉氏は知ってたんですが、後から調べたら
「江戸時代、虫歯の痛みに耐えかねて切腹した人の碑」
が南千住の日枝神社にあるそうで。行きたかったなぁ。

>いとしゅんさん
まだまだ知らない東京がいっぱいあるんですよ…
たぶん荒川はそれだけじゃなくてね、虫歯の(以下略

>軟体先生

絶 対

イ ヤ !!!!!

>neenaさん
調べたら、秋葉原乗り換えと時間変わらないんですよ。<東京→三ノ輪
路線図がわかりやすかったんで上野から行きました。

まだまだ先が長いんで、よろしければお付き合い下さいませ。

Posted by: たい@世田谷区 | May 10, 2005 at 03:43 AM

企画者から見た『東京23区くじ引きツアー』【2. 荒川区】

最初の観光地は「投込寺」。この企画の迷走を暗示するような、素晴らしい名所からのスタートとなったのだが、正直に言えばここを「観光地」とするのはやや気が引ける部分があった。それは、いきなり「東京の人でも、なかなか行かない場所」をスタート地点とした…からではなく、「投込寺」へは本来であれば吉原のあたりを歩いてから来るのが「正しい観光」だからだ。しかし残念ながら吉原は「台東区」に位置している為、このコースを歩く事は不可能。今回は仕方なく「投込寺」のみを観光した訳だが…、片手落ちの感は否めない。

ちなみに東京に住んでいない人の為に補足すると、「赤線」等で有名な吉原は、今でも風俗街として機能している。だが最近の風俗街の中心といえば池袋や歌舞伎町であり、吉原のソレはすっかり寂れてしまった。これも時代の流れ、という事なのだろう。またこの辺りは「いろは商店街」に代表されるドヤ街が近くにある為、知らずにこの付近をウロウロしていると、「炊き出し」等の精神的ダメージの大きい光景を目にする事になるので注意が必要。あと「お茶でも飲みたい」「一休みしたい」などと思って、うっかり「情報喫茶」に入らないように。もっとも「休憩したい」のであれば話は別だけど。「情報喫茶」が何であるかは各自調査。

さて「荒川区」についてだが、冷静に考えると日暮里の辺りも「荒川区」なのだから、名所の多いこの地域を散策した方がより「観光」になっていたのではないか…、と思われる。ただ無意味に「都電荒川線(都内を走る唯一のチンチン電車)」に乗るのも、また良し…なのだが、今となっては後の祭り。

この項では次男氏の名言「いや~っ、東京って何にもないなぁ!」が飛び出した。あまりにも発生の頻度が高いのでたい氏はカットしているようだが、殆どの時間を移動に費やすこの企画の本質を突いたこの発言は、これ以降、何かある毎に誰となく口にする事となったのだった。

最後に吉田氏のダジャレだが、
Q:「東京23区の中で、洗濯物が一番よく乾く区は何区でしょう?」
A:「洗濯物、干してビックリ、アラ乾く~っ(荒川区)」
というのが「正しいのだっ!!」という指摘があったので、ここに記しておく。

Posted by: 高倉仮面 | May 17, 2005 at 01:39 AM

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