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Saltish Christmas Eve

12月24日。世間ではクリスマスイブということもあって、あちらこちらでそういうムード一色だったようだ。
でも、そういうのを意識するのは学生までなんだろうか、自分の心境が変わったからなのか。昔に比べると、たいしてクリスマスだろうがなんだろうが気に留めないようになった。

で、当日の夜は当然のように仕事をしていた。
週末だし、同期(男)と仕事が終わってから飲もうかとも話していたんだが、同期が働いている工場で起こった緊急トラブル対応のために駆り出され、飲みは中止。仕方なく、地元の塩とんこつラーメン屋で晩ごはんを済ませることにした。結局、いつも通りだ。

その地元のラーメン屋に行くのは、ずいぶん久しぶりだった。
最近発見した別のラーメン屋に浮気するまではけっこう足繁く通っていたので、食券を出しさえすれば何も言わずともトッピングのキムチの半分が半チャーハンに入り、麺は固めで出てきた。いわゆる「いつもの」というヤツだ。
1ヶ月ぐらい間を空けていたので、その「いつもの」はまだ通用するのだろうかと気にかけながら、のれんをくぐった。

「いらっしゃいませー!」

その瞬間、何か今までと違うものを感じた。
なんだろう、この違和感は?と思ってカウンターの向こうに目をやると、いつもの見慣れたおっちゃん達がいないではないか。代わりにいるのは、どう見ても鉄人になり損ねた道場六三郎風のおっちゃんと、どう見てもハワイ出身な恰幅のいいおばちゃんだった。

しまった…!
なんだかよくわからないけど、しまった…!

急に、その『違和感』が、得体の知れない『不安感』に変わった瞬間だった。
だがしかし、「すんません、店の人いつもと違うんで、ヨソ行きま~す」なんて言って出られる雰囲気ではないし、やっぱり食べてみないと最終的な評価は下せないもの。まずは食ってみるか…ということで、食券を買うことにした。

財布の中を見ると、千円札がなかった。
一万円札の両替を頼もうとしたそのとき、「両替ですか?」と横から声がする。
振り返ると、その声の主は、年端もいかない子供ではないか。小学校中学年ぐらいだろうか。そして、その風貌は、明らかにニセ道場六三郎のおっちゃんとハワイアンのおばちゃんの間に生まれました、という以外の何者でもなかった。

えっ…? 店に、子供…?

得体の知れない『不安感』は、確固たる『不安』へと形を変えた。
中半呆然としながら、一万円札をその子供に渡す。「お父さん、両替~!一万円~!」と言いながら父の元に駆け寄る子供。
そこには、今まで通い続けた馴染みの雰囲気は、もう微塵もなかった。

すでに食べる前から少々落胆しながらも、生ビールと餃子とラーメン(麺固め)に、トッピングでキムチを注文。
カウンターに座り、注文した生ビールをゆっくり飲みながら、疲れ切ったアタマを癒していた。

kimuchi
ビールを飲んだときに出てきた白菜キムチとキュウリのキムチがクリスマスカラー。

しばらく経つと、店にカップルが1組入ってきた。
クリスマスイブといえば高級料理とかおしゃれなところに行くのが『定番』なんだろうが、こういうカップルもやっぱりいるんだなぁということで妙に納得。その2人も食券を買って注文を終え、カウンターに座って談笑を始めたようだった。

テレビを見つつぼんやりと考え事をしていると、「ピピピピピ…」というアラームの音がした。自分が注文していた餃子の出来上がりを知らせるものだったようだ。
ちょっとだけ椅子に座り直して、なんとなく『餃子とビールで幸せになっちゃおう』という姿勢を作り、出てくるのを待っ…ていたんだが、なぜだか出てくる気配が一向にない。
ふとカウンターの向こうを見ると、ニセ道場オヤジとハワイアンおばちゃんが険しい顔をしながら小声で何かを話しているではないか。
そして、ニセ道場オヤジは冷凍庫を開けて餃子を取り出し、それをフライパンに入れ、タイマーをセットした。

あの、それ… 僕のですか…?

イヤな予感は的中した。
程なくして、ニセ道場オヤジは焦げた餃子を乗せた皿を持ってきた
そして、「焼きすぎちゃったんで作り直してるんですけど、時間、大丈夫ですか?」と言う。
いったい誰がここでNoと言えようか。しぶしぶ「大丈夫ですよ。」と答え、引き続き焼き上がりを待つことにした。
きっと、ラーメンが先に出てくるから、それをすすっていればそのうち来るだろう、と信じながら。

が、話はここで終わらなかった。
自分のために準備していると思われていたラーメンが、後から入ってきたカップルの方に先に出されたのである。

ちょっと待てー! 順番ちゃうやろそれー!

もうさすがにボーッとして待っているというわけにはいかなくなった。
こうなれば、カウンターの向こうで一体何が起こったのかをせめてこの瞬間からでもちゃんと見ていなければ、きっと納得がいかないような気がしたのだ。
カップルに一瞬にこやかな顔をしてラーメンを出した後、ニセ道場オヤジとハワイアンおばちゃんの表情がとたんに険しいものに逆戻りした。そして、ハワイアンおばちゃんは今度こそ自分のものと思われるラーメンの玉を鍋に投入した。
その行為で、なぜカップルと出される順番が入れ替わったのかを、僕は、ようやく理解した。「餃子の焦がしすぎで口論してる間に、麺を茹ですぎてしまった」というのが事の真相だったようだ。
ここまで来ると、何か不思議な力が働いているようにしか思えなかった。

待たされる客としてはイライラするのは当然なのだが、それ以上にニセ道場オヤジとハワイアンおばちゃんは無言で辺り一面にイライラのオーラをまき散らしながら動き回っていた。そこで餃子のタイマーが再び鳴ったのだが、イライラしていてそれどころではないのか、全く止めようとしない。ひたすらピピピピピピピピ鳴りっぱなしである。
そんな2人をよそに、両替のときに出てきた子供が、反対側のカウンターの奥でクリスマスケーキなんぞを食っている。
そういうのを見てしまっては、もはや自分がイライラしていることなんてアホらしく思えてしまい、なんだか萎えてしまった。

やっとのことで出てきた餃子は以前のものより味が落ちていて、
やっとのことで出てきたラーメンは、そのときの自分の気分を象徴しているような、なんとなくしょっぱい味だった。

今振り返ると、クリスマスイブじゃなくても十分しょっぱい体験だったなぁと。
心の底から、そう思う。

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Comments

ちらりずむ。

私にとっては、このアングルかなりチラリズムで
惹かれます。
ビ、ビール。
美味しそう・・・。


Posted by: fanshen | December 29, 2004 at 12:35 PM

ビールはおまけです(笑)
いろいろ考えた結果、通うラーメン屋を乗り換えちゃいそうな予感…

Posted by: たい | December 31, 2004 at 12:33 AM

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