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とにかく、好きなんです。

高級料理店に滅多に行かない理由が、2つある。

ひとつは、純粋にお金がないからだ。
銀座の高級江戸前寿司屋とか、青山の高級フランス料理店なんかにふらっと行けるようになりたいという夢もある。でもね、やっぱりどう考えたって高い!高すぎる!そうやすやすと行けるかコンチクショウー!
…少々取り乱してしまったが、こればっかりは、安月給なサラリーマンをやっている以上、覆しようのない事実である。

もうひとつ。
おいしいものを食べたときに得られる満足の『絶対値』というものがある。どれぐらい、そのモノを食べたことで、ほうっと気が抜け、頬の筋肉が緩み、脳内にβ-エンドルフィンが分泌され、シヤワセになる度合いのことだ。
実は、高級料理を食べたときの満足の度合いと、B級グルメのおいしいものを食べたときの満足の度合いは、ベクトルの向きは違えど『絶対値』はほぼ等価であることに、あるとき気がついた。そのB級グルメとは、ときにラーメンであったり、ときに野外で食べる塩むすびであったり、さまざまである。
もちろん、お好み焼きとて、その例外ではない。むしろ、『the best of B級グルメ』の称号を冠してしまってもいいぐらいだ。

『言戯』のそんちょさんに負けず劣らず、自分も、お好み焼きに恋し、恋焦がれている人間のひとりである。関西や広島の人間と付き合いが多いせいかもしれない。

お好み焼きの楽しみ方には、3つあると思っている。

①自分で作る

自分で作るお好み焼きは、決まって大阪風。銀色の計量カップのような器に、生地と一緒にキャベツやらイカやら豚肉やらが所狭しと詰め込まれてやってくる。それをぐちゃぐちゃかき混ぜて鉄板の上に載せ、焼き上がりを待つんである。
おいしく焼くためには、守らなければいけないルールがあるのだ。

混ぜるとき、しっかり空気を入れてやること。
間違っても、早く焼き上がってほしいからといって、ヘラでパンパン叩いたり、ぎゅぅっと押しつぶしたりしてはいけない。そこをぐっと我慢することで、焼き上がったときのふわふわ感が味わえるのだ。

ちょっと表面が焦げすぎたかな、と思っても、そこからもう少し待ってひっくり返すこと。
前述のふわふわ感を味わうためには、しっかり中に火を通してやらないといけない。実は、表面がきつね色を通り越して焦げ茶色になっているぐらいがちょうどよかったりする。その方がうまくひっくり返せるし、周りがカリカリとして小気味よい食感が出せるはずだ。ヘラのカドでつっついて「サクッ」という音がしたら、うまく焼けていると思っていいだろう。

知人友人と自分で焼く店に行ったとき、ときどき「焼いてくれ」と頼まれることがある。よっしゃ!と思って焼くのだが、実は責任重大でけっこうプレッシャーがかかっているというのを周りに知られないようにするのに必死なのかもしれない。そんなときは、周りがしている話にはあまり入っていけない。
無事焼き上がって、「おいしい!」と言われた、自分がおいしいと思ったときに、初めてその苦労は報われるのである。その瞬間は、自分でうまく焼いたものを口に入れたときのおいしさに勝るとも劣らず、うれしい。

②焼いてもらう(大阪風)

お好み焼き屋は、なにも自分で焼く店ばかりではない。ちゃんとしたプロの技術をもってして作り上げられた『作品』を出してくれる店も数多く存在する。
大阪・天満の改札を出て徒歩1分、アーケードに店を構える『菊水』がいい例だ。大阪に行ったときは、時間があればここに食べに行くことにしている。上記の焼き方も、実はここで見たのをマネしているだけだったりするのだが。
この店のお好み焼き、目の前の鉄板で焼いてくれるのだが、一切手を出してはいけない。お腹の空いた状態で、目の前で、静かにじっくりと艶めかしく焼かれていくお好み焼きを眺めながら、ただ唾を飲むことしかできない。まさに蛇の生殺し、「踊子さんには手を触れないでください」状態だ。

待っている間、こんな札を机の上に置かれる。

食べたらパンチだそうだ。厳しい闘いがそこにはあった。

しかし、晴れて焼き上がり、一口頬張ると、そこには幸せな世界が待っている。

じらされるとその分キモチイイようなもんである。そんな人間心理も、うまく味のスパイスとして取り込んでいる気がする。

東京に、そんなお好み焼きを出してくれる店があるというのを、テレビで見た。東急池上線沿線、蓮沼駅の『福竹』だ。ぜひとも一度行ってみたいので、同行者、募集中。

③焼いてもらう(広島風)

広島では、喫茶店や、コンビニの数よりもお好み焼き屋の数が多いと言われているそうだ。(なんでも860店舗ぐらいあるらしい)
そんな数多あるお好み焼き屋の中でも、常にトップクラスに位置するであろう店が、薬研堀『八昌』だ。今は取り払われてしまったが、芸能人のサインが壁に所狭しと書かれているほどの有名店で、1時間待ちはざらである。広島に遊びに行ったときは、必ずと言っていいほど足を運んだものだった。
そののれん分けが東京は小田急線沿いの経堂駅にあるのは、東京在住な自分にとってうれしい話だ。週末など、ときどきお世話になっている。

だいたいの広島風お好み焼き屋は、ファストフード感覚の大阪風お好み焼きと違い、どこに行ってもお好み焼きと並列で鉄板焼きを扱っている。実はきっと、これが広島風お好み焼きがスローフードたる所以なんだろう。
例を挙げると、経堂の『八昌』に行った際の、自分流の広島風お好み焼きの楽しみ方は、こうだ。

まずは、チャンジャキムチや味噌煮込みなどをつまみに、ビールで乾杯。
    ↓
牛タンやカキバターなどの鉄板焼きをゆっくり楽しむ。お酒は、チューハイや焼酎に切り換えてもよい頃合。
    ↓
とんぺい焼きや、焼きそばを頼む。待っている間は、のんびりと話に花を咲かせることができる。
    ↓
とんぺい焼きや焼きそばを食べ終わるちょっと前ぐらいに、タイミングを見計らってお好み焼きを注文。焼き上がりに時間がかかるのだが、たいがい、お酒と程よい満足感でそんなことはちっとも気にならなくなっている。
    ↓
最後に、ようやくメインディッシュ登場。(写真は『そば肉玉』)

カリカリ感と、ぎっちり詰まった中身がたまらなくおいしい。
    ↓
ごちそうさまでした。所要時間、約2~3時間。

お好み焼きは必ずひとつ丸ごと食べなければいけない、という概念を捨てれば、広島風お好み焼きはコース料理としての食事スタイルでも楽しめるのである。好きな人と、行きたいと思う人と食べに行くお好み焼きは、また格別なものがあるのだ。

余談だが、Webで検索をかけていたら、自宅の広島風お好み焼きの作り方を書いたブログ(なせば成る:広島風お好み焼きの作り方)を発見したので、こちらもトラックバックさせて頂くことにした。いずれ試してみることにしよう。楽しみだ。


最後に、これだけはどうしても言っておかなければならない。
慣れるまではポロポロこぼれるが、それはお好み焼きをおいしく食べるための授業料だと思って我慢するべし。
こっちの方が、きっと箸で食べるよりも何倍かおいしい。

だから、


お好み焼きは、ヘラで食え!


以上。

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Comments

>たい様

こんばんは。
はじめまして。トラックバックと記事のご紹介ありがとうございます。

念入りな記事に驚きました。
食に対するこだわりを感じました。

お好み焼きの手作り、挑戦してみて下さいね。

もちろん、へらで食べましょう。

Posted by: tom-chan | November 02, 2004 at 12:41 AM

ご来訪ありがとうございます~。

いや、実は大してこだわってるわけじゃないんですけどね(笑)
おいしければいーんです。

ぜひぜひ、広島風お好み焼き、挑戦させていただきます。

Posted by: たい | November 02, 2004 at 02:14 AM

ごめんなさい!!
ヘラはお好み焼きを冷ます為に
上に乗せてそこから箸で食べとる(><;)

今年の冬はヘラから食べてみる♪

Posted by: しとみ | November 03, 2004 at 10:11 PM

ヘーラーでー食ーえー(笑)

確かに、舌やけどする率もへらの方が高いです。
でも、箸だとお好み焼きが分解しちゃってすぐ冷めちゃうんだよね。
もったいないので、鉄板の上でちょい焦がしめにしといて、
ヘラで切りやすくなったところをざくざく切っていただいてます。
カリカリしてておいしいよ。

Posted by: たい | November 04, 2004 at 12:52 AM

福竹
行きたいです!
でも、お店のおばちゃん怖いらしいですよ・・・

Posted by: ヒダカ | December 16, 2004 at 11:31 AM

福竹、行こう行こうと思いつつ、早一月半経過しました。
テレビの印象では、言うこと聞いてりゃ全然怖くなさそうな感じでしたけどねぇ。<おばちゃん
そういうキャラクターもいいスパイスになってるのかもしれませんね。

Posted by: たい | December 17, 2004 at 01:59 AM

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Tracked on June 12, 2005 at 10:56 AM

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